管理職、マネジャーなど、部下をもつ会社員にとって感情のマネジメントは最低限のスキルだといえるでしょう。
その感情の中でも一番扱いが難しいのが、イライラしている時に感じている『怒り』の感情です。
仕事中にイライラした状態だと、以下のようなデメリットがあります。
- 生産性が下がる
- エネルギーを無駄に消費する
- 周りの空気も悪くなる
逆に、イライラ(怒り)の感情は仕事においてメリットが一つもありません。
人間ですから、イライラする瞬間があることは仕方ありません。
しかし、イライラした瞬間に怒りに任せて行動するか・しないか、イライラを引きずるか・引きずらないか、この選択によって人生が好転することも、逆に悪い流れになることも両方あり得ます。
今回は、現役部長である管理人が、仕事におけるイライラとの付き合い方について解説します。
この記事を最後まで読むことで、
- 仕事中の怒り(イライラ)との正しい付き合い方
- 怒りのマネジメント方法
- イライラしないための考え方
を知ることが出来ます。
イライラ(怒り)の発生原因と特徴は?
イライラが何も生み出さないことは、冒頭でも既にお伝えした通りですが、なぜ分かっていてもイライラしてしまうのか。
必要以上に怒りを覚えたところで、エネルギーを無駄に消費して精神的にも参ってしまいますよね?
怒り(イライラ)をコントロールするには、怒りの構造(発生原因)を知っておく必要があります。
コアビリーフが怒りを生む「べき」
人が怒りを覚える瞬間には、必ず〇〇する”べき”というコアビリーフが存在しています。
- 挨拶は人の目を見ておこなうべき
- 仕事は定時の5分前には準備を終わらせておくべき
- 先輩が帰るまで後輩は残っているべき
これは一例ですが、自分の中のべきが破られたときに、人はイライラ(怒り)を覚えます。
ここで大事なことは、『べき』には正解も不正解もないということ。
勘の良い方なら気づいているかもしれませんが、このコアビリーフも個人の価値観なので、自分の中の正解であって、他人にとっての正解とは限らないのです。
イライラ(怒り)は自分の価値観の中で起こり、自分自身が作り出しているもの、ということを頭で理解するだけで怒りの感情との付き合い方が大分変ってきますよ。
自分が生み出した感情
次に重要なことは”怒りは自分が生み出した感情”である、ということ。
- 部下がミスばかりする
- 客先から無茶な要求を受けている
- 上司が正当な評価をしてくれない
色々な理由でイライラすると思います。
でもこれ、全て自分の価値観でイライラしているだけなのです。
分かりやすく言うと、あなただからイライラすることでも、他の人が同じ状況になってもイライラしないこともある、ということです。
怒りは周囲に伝達する
イライラしている人が職場に一人いるだけで空気が悪くなる…こんな経験をしたことがありますよね?
怒り(イライラ)の感情は周囲に伝達するという特徴があります。
怒り以外の感情も周囲に伝達しますが、怒りはエネルギーが強いため、喜び、悲しみなどの感情よりも周囲への影響が強いと言われています。
また、怒り(イライラ)のやっかいな所は、上から下(ここでは力関係が強いものから弱い者へ)へ連鎖するという特徴があります。
身近な対象ほど怒りが強くなる
次の特徴が、怒りは身近な対象ほど強くなるというものです。
分かりやすい例は家族ですね。会社の人間関係では考えられないような喧嘩を夫婦では繰り広げてしまう‥子供には部下には言えないような言葉で叱ってしまう…身近な対象だからこその甘えからくるのですが、怒りが強くなる傾向にあることを覚えておきましょう。
仕事場でも、身近な存在である直属の部下や付き合いが長いメンバーには怒りが強くなりがちなので注意が必要です。
怒りは矛先を固定できない
イライラが発生したときに、感情を相手にぶつけられるケースと、そうでないケースがあると思います。
後者の場合、怒りの感情を内に秘めたままだと、他の対象にあたってしまうということも多いです。
怒り(イライラ)は矛先を固定できないという特徴があるのです。俗にいう八つ当たりです。例えば、
- 駅で駅員に無駄にキレる
- 飲食店で店員に文句をいう
- 家族に仕事のストレスをぶちまける
なんだから、思い当たる節はないでしょうか?
怒りの矛先を自分に向けていませんか?
先ほど、怒りは矛先を固定できないとお伝えしましたが、その矛先を自分に向けている方も多くいます。
例えば、過度な飲酒や喫煙もイライラ(怒り)の矛先を他人ではなく自分に向けている可能性も高いと言われています。
また、繰り返し起こる頭痛を解消するために鎮痛剤を毎日大量に摂取したり、暴飲暴食を繰り返すなどもこのケースに該当するかも知れません。
イライラ(怒り)の感情は貯め込むとストレスとなり、ストレスを上手く解消できないと自分自身に怒りの矛先を向けてしまうこともあるので注意してくださいね。
仕事でイライラする瞬間5選
ここからは、仕事でイライラ(怒り)する瞬間を見ていきましょう。
実際に私が感じていることと、職場の部下などからよく聞くイライラの瞬間なのでリアルな結果となっていると思います。
人間関係(上司・同僚・部下)
やはり人がイライラする原因は人間関係が一番多いのではないでしょうか。
- 高圧的だけど仕事ができない上司
- 愚痴や会社の文句を言ってるだけの同僚
- 何度言っても同じ失敗を繰り返す部下
こういった人間が周りにいるとストレスが溜まって、イライラする瞬間も増えてしまいますよね。
会社の場合、すぐに部署移動することも難しいので、一度配属された部署に合わない人間がいると最悪な気分になるものです…。
仕事量
働き方改革が世の中に浸透してきているので、一昔前のようなブラック企業は少なくなってきてはいます。
私が働くIT企業の現場においても、10年ほど前までは休日出勤、徹夜が当たり前の現場もありましたが、最近では三六協定を守る企業が増えてきています。
それでも、業界によってはまだまだブラックな環境もあるでしょう。
飲食業界や運送業など会社によっては人を人として扱わないような企業もまん延しており、ひどい会社だと残業代も出ないところもありますよね。
そんな会社で働いていると、イライラしてしまうことも多いのではないでしょうか。
仕事内容
先ほどの仕事量も、この仕事内容によっては考え方が変わるのではないでしょうか?
やりがいがある仕事なら、多少仕事量や残業が多かったとしても充実感があるのでイライラすることもすくないでしょう。
しかし、自分が望む仕事内容ではないケースでは、仕事量が少なく定時上がりできていたとしてもイライラしたりストレスが溜まってしまうものです。
要するに、仕事におけるイライラを最小限にするためには、自分が望む業務内容ができる会社、部署で働くことがとても大切なことなのです。
通勤・退勤時の満員電車
会社の業務中ではないですが、満員電車が嫌いな方も多いのではないでしょうか。
実は、私が一番イライラしたりストレスがたまった瞬間って何だろう?と考えたときに、真っ先に思い浮かんだのがこの満員電車だったのです。
最近では、新型コロナの影響によりテレワークが可能な企業も増えており、満員電車に乗る必要がなくなった方もいるのではないでしょうか?
私もテレワークが可能な現場なので、ほとんどは家で仕事ができているのでストレスが激減しました。
評価基準
会社の評価基準に不満を抱えている社員も多いです。
- 結果を出しているのに昇給しない
- 自分より仕事ができない同僚が出世した
- 年功序列じゃないと言っているが実態は…
出した成果を正当に評価してもらえないとイライラして会社への不満がたまっていくものです。
報酬(給与・年収)
先ほどの評価制度とも関連していますが、一番わかりやすいのが報酬面でのイライラです。
生活をするために仕事をしているわけですから、自分のスキルや成果を正当に評価してもらい、最大限の報酬をもらいたいと考えるのが普通の思考です。
- 大学時代の同期と比べて明らかに給与が低い
- 昇給ペースが同業種の同年代と比べて悪い
- 福利厚生が全くない
報酬面で会社への不満がたまり、イライラしてしまう社員が多いのも現実問題としてあります。
仕事でイライラした時の対処法5選
職場でイライラしてしまったとき、どのような行動をすればよいのでしょう?
繰り返しお伝えしている通り、イライラ(怒り)に任せて行動しても良い結果は生まれません。
とはいっても、人間ですから仕事場でイライラすることもありますよね。
怒り(イライラ)との正しい付き合い方には、対処法と体質改善の2つの視点で考える必要があります。
- 対処法:怒りに任せて行動しない
- 体質改善:怒りにくくするための対策
魔の6秒間をやり過ごす(対処法)
イライラした瞬間からの6秒間、この6秒間をやり過ごすことで、怒りに任せた間違った行動を回避することができます。
なぜなら、怒りが生まれてから理性が働くまでにかかる時間が6秒間だといわれているからです。
イラっとしてからすぐに発言したり行動するのではなく、何かしたの方法で6秒間を過ごすことが出来れば冷静に理性が働いた状態で行動できるようになるのです。
怒りの一次感情を知り表現する(体質改善)
怒り(イライラ)には、一次感情が存在していることをご存じですか?
例えば、部下がミスを繰り返して顧客からクレームが来てしまったとき、おそらくあなたは(このままミスが治らないと顧客からの発注がなくなってしまう可能性がある・・)という不安を覚えているでしょう。
この不安が一次感情で、その次に二次感情として”怒り”(イライラ)が来るのです。
怒りの表現方法として正しいのは、二次感情ではなく、一次感情です。
なんでミスばかり繰り返すんだ!ではなく、このままの状態だと顧客からの発注がなくなってしまう可能性もあるから、ミスを繰り返さないためにどうすべきか一緒に考えよう、とした方が指導された後輩も動きやすくなりますよね。
怒り(イライラ)した状態で相手と対峙してしまうと、感情的になったり、本来伝えるべき以外のポイントを強調してしまったり、冷静に話をすることができなくなる可能性があります。
しかり、一次感情を重視して表現すれば、冷静かつ相手に伝わりやすい言葉で伝えることができます。こうして欲しかった、自分はこう感じている、という一次感情を伝えるようにしましょう。
深呼吸(対処法)
イライラした時の対処法で一番有名な対処法が深呼吸ではないでしょうか。
イラっとした瞬間から深い深呼吸をする。先ほどお伝えした理性が働くまでの時間である6秒間を区切りとしてゆっくりと呼吸をしましょう。
6秒間を過ぎてしまえば、カッと頭に昇った血がすっと落ち着くのがわかると思います。
深呼吸の他にも以下のような対処で6秒間をやり過ごすことができます。
- その場から離れる
- 頭で数字を数える
- 決まったおまじないを唱える(例:かめはめ波!!!!!!!)
自分なりのルールを決めておくのが良いでしょう。
仕事でイライラしないための考え方
職場でイライラする瞬間や、イライラしてしまった時の対処法を解説しましたが、一番いいのはそもそもイライラしないこと。
イライラしている状態は、怒りの感情が全面に出ているので、ほかの感情よりもエネルギーを消費する傾向にありますし、冷静な判断をできない可能性も高くなります。
イライラする原因を排除する
イライラが何も生み出さないことは説明しましたが、それどころかマイナス面が多いことにも注目してください。
- 冷静な判断ができずに重要なタスクが遅延
- 他メンバーへの風当たりも強くなる
- 空気が悪くなる
など、周りへの悪影響もありますし、エネルギーを無駄に消費することで体調への変化にも注意しなくてはいけません。
前置きが長くなりましたが、イライラしないためには、物理的に原因を取り除くことをおすすめします。
- 合わない同僚がいるなら違う現場への移動を直訴
- 合わない上司がいるなら別部署への移動、転職を検討
- 合わない部下がいるなら移動させる
これらは一例ですが、人間関係によってイライラすることも多いでしょうから、こういった対策を検討する価値はあります。
相手に求めすぎないようにする
なぜイライラするのか?その原因を探っていくと、相手に対して必要以上に期待していることが原因であるケースが多いです。
- なんでうちの嫁は洗い物をやらないんだ…
- なんで顧客に提示する資料で誤字脱字がこんなに多いんだ…
- なんで自分から進んで勉強しないんだ…
なんで…なんで…そうやって自分の物差しで相手に対してイライラしていることありませんか?
結局のところ、これって自分本位の考え方であって、相手に自分の考え方を押し付けたうえでイライラしているだけなんです。
いや別にあれですよ。部下や仕事をする上では自分の考え方や働き方を指導していくことは重要です。指導してもいうことを聞かなければイライラもするでしょうし、それは当然だと思います。
でも、その場合でもイライラはしない方がいいです。なぜなら上記した通り、イライラは何も生み出さないからです。
じゃあどうすればよいか?それは、相手に期待しすぎないということです。相手に期待するから、裏切られたときにショックでイライラする。
そうならないために、期待値をいつもの半分、いや十分の一にしておく位のイメージが大事です。
全ては自分が成長するためだと割り切る
先ほどの人に期待しすぎないことに通じる点がありますが、全ての出来事は自分が成長するためだと考えましょう。
実際にその通りですし、考え方ひとつで自分が成長するための糧にもできますし、逆にイライラしてマイナスにしか働かない出来事にも変えることが出来るのです。
良いことも、悪いことも全て自分がステップアップするための出来事である、こう考えることが出来るようになるとかなり人生が楽になりますよ。
- 部下が客先で大失態を犯して謝罪に行くことになった
- 大型の顧客から大幅は受注減を突然言われた
- 奥さんに理不尽なことで切れられた
こんなとき、他人のせいにすることは簡単です。部下がミスをしているのですから部下にイライラ…顧客から急に受注減を言われているので、顧客に対してイライラ…奥さんにイライラして大喧嘩…そう、簡単なんですよ、他人のせいにしてイライラした方が。でも、その結果を想像してみてください。
何も良いことはない、それ以上に悪い結果が色々とついてくることの方が多いですよね?
どんなに理不尽なことがあっても、全ては成長の糧、そう考えるのです。
怒りは何も生み出さないことを理解する
イライラすることによるメリットが一つもない、という事実をしっかりと認識してください。
先ほどから何度もお伝えしている通り、イライラ(怒り)は何も生み出さないばかりか、周りへの悪影響や体への不調も引き起こすデメリット爆弾なのです。
喜怒哀楽、全ての感情があることはよいのですが、イライラが多いと決して良いことはありません。
仕事においても、常にイライラしている人は周りからの嫌煙されがりですし、出世街道から外れるケースも多いです。
だってそうですよね、出世するには基本はチームをまとめ上げられるスキルが求められますが、イライラしている人に部下を任せようとは思いません。
原因自分論
仕事においてイライラしないための考え方として一番おすすめなのが『原因自分論』です。
これまで解説してきた考え方にも触れてきているのですが、何か悪いことがあっても決して人のせいにはしない。すべては自分の責任であるという考え方をするのです。
まとめ:仕事でイライラした時の原因と対処法
いかがでしたか?
一言で仕事でイライラした時といっても、環境により原因も人それぞれです。
でも共通して言えること、それは記事中でも繰り返しお伝えした通り、
イライラ(怒り)はマイナスしか生み出さないこと
です。
怒りの感情をコントロールすることは会社員、特に管理職になるには必須のスキルです。