この記事では、SES部長として15年以上採用面接に関わってきた管理人が、実際にスクール卒の応募者を何十人も見てきた採用側のリアルな視点で「転職できない理由」と「突破戦略」をきれいごと抜きでお伝えします。
プログラミングスクールに通う前、通っている最中、卒業した後――それぞれの立場の方に読んでいただける内容にしています。
📌 この記事を読むとわかること
- スクール選びで後悔しないチェックリスト
- そもそも「スクールに通う意味があるか?」という問いへの本音
- スクール卒が転職できない採用側から見た本当の理由5つ
- 採用される人・落とされる人の決定的な違い
- スクールのカリキュラムと採用現場の5つのギャップ
- スクール卒がIT転職を成功させる5ステップ
この記事の要約
プログラミングスクールを卒業しても転職できない原因は、スクールの学習内容と採用現場が求めるものの間にある「5つのギャップ」にあります。SES部長が採用側の視点で、スクール卒が陥りやすい落とし穴と具体的な突破戦略を解説します。
プログラミングスクール卒が転職できない5つの理由【採用側の本音】
これはスクール卒を否定しているわけではありません。ただ、採用側の視点を知らずに動いている人が多すぎる。知っていれば防げる失敗ばかりです。
理由①:ポートフォリオが「テンプレート量産品」に見える
現在、IT転職向けのプログラミングスクールは日本に200校以上存在します。そしてその多くが「Todoアプリ」「ECサイト」「SNSクローン」をポートフォリオの課題として出しています。
採用担当者はこれを毎週見ています。ReactでTodoアプリを作ったポートフォリオを月に10人以上が持ってくる。この状況で、同じものを持ってきても「スクールで言われた通りに作りました」という印象以上にはなりません。
理由②:コードの品質が実務水準に届いていない
これは厳しい話ですが、スクール3ヶ月で書けるコードと、実務で求められるコードの間には、大きな差があります。
採用面接でGitHubのコードを実際に見ると、以下のような傾向がよく見られます。
- 変数名がわかりにくい(
a、tmpなど意味のない命名) - コメントがほとんどない、または逆に多すぎる
- コンポーネント設計が雑で、1つの関数に何十行も処理が詰まっている
- エラーハンドリングが一切ない
- コミットメッセージが「fix」「update」だけで何を直したか不明
理由③:転職理由が「将来性」だけで具体性がない
面接で最もがっかりする回答のひとつが、「IT業界は将来性があると思ったので」です。
この回答は、ほぼすべてのスクール卒からいただきます。採用側から見ると、「スクールが書いたブログ記事の内容をそのまま話している」ようにしか聞こえません。
理由④:スクールの「転職保証」を過信している
多くのプログラミングスクールが「転職保証」を謳っています。この言葉を信じて、スクール任せにしてしまう受講者が一定数います。
転職保証の実態は、「提携企業への就職支援」であることがほとんどです。その提携企業がどんな会社かは、よく確認する必要があります。
- SES企業の中でも下請けが中心の会社
- 「エンジニア」と名のついたコールセンター
- ITサポートという名の社内ヘルプデスク(プログラミングは一切しない)
転職保証があるスクールを選ぶことは悪くない。ただし「保証先がどんな企業か」を事前に徹底的に調べることが必要です。
理由⑤:学習量が「採用基準」に達していない
プログラミングスクールの多くは、3ヶ月〜6ヶ月のカリキュラムです。週5日・毎日8時間学習したとして、3ヶ月で480時間。週3日・1日3時間なら、3ヶ月でわずか108時間です。
ITエンジニアとして採用後に最低限のパフォーマンスを出すためには、少なくとも500〜1,000時間の学習が必要と言われています(職種にもよりますが)。スクールのカリキュラムをこなすだけでは、到達しない場合があります。
採用される人・落とされる人の違い|SES部長が面接で見ていること
採用されるスクール卒の共通点
SES部長として採用面接を担当してきた中で、「この人は採用したい」と感じたスクール卒には、ほぼ例外なく以下の共通点がありました。
- スクール課題以外のオリジナル作品を持っている:自分の生活の課題を解決するために作ったもの、趣味を活かしたもの。「これを作りたくてスクールに通った」という話ができる
- GitHubのコミット履歴が毎日続いている:スクール終了後も学習を続けている証拠が可視化されている。草(コントリビューション)が緑で埋まっている人は、それだけで印象が違う
- 転職理由に前職との接続がある:「前職の営業で感じた業務効率化の課題をシステムで解決したいと思った」など、過去の経験からIT転職への論理的な流れがある
- 希望年収について現実的に理解している:「最初は年収が下がることも理解した上で、3年後に〇〇万円を目指したい」と言える人
- 入社後にやりたいことが具体的:「入社してから決めます」ではなく、「最初はインフラ運用でスキルを積み、2年後にはネットワーク設計に関わりたい」というキャリアビジョンを持っている
落とされるスクール卒の共通点
逆に、書類または面接の段階で不採用にするケースに多いパターンです。
- ポートフォリオがスクールの課題作品のみ(自主制作ゼロ)
- GitHubのコミットがスクール在籍中だけで、卒業後は止まっている
- 「IT業界は将来性がある」だけで、なぜこの会社・職種かを答えられない
- 年収の話ばかりする(「前職より上げたい」が最大の動機になっている)
- 技術的な質問に対して「スクールでは習いませんでした」を連発する
- スクールのカリキュラムを「修了した」ことへの過度な自信がある
スクールのカリキュラムと採用現場の「5つのギャップ」
転職できないスクール卒と採用現場の間には、構造的なギャップがあります。スクールが悪いのではなく、スクールの目的と企業が採用で見ている基準が、そもそも異なっています。
ギャップ①:「完成させること」vs「品質を保ちながら実装すること」
スクールの課題評価は「動くものを作ること」が中心です。一方、採用現場が見るのは「品質を保ちながら、チームで保守できるコードを書けるか」です。
動くけど読めないコード、コメントがないコード、命名規則がバラバラなコードは、実務では「書けていない」に等しい。スクールを優秀な成績で卒業した人でも、この視点が抜けていることがあります。
ギャップ②:「個人学習」vs「チーム開発の経験」
スクールのカリキュラムは多くが個人プロジェクトです。しかし実務でのプログラミングは、ほぼ100%チーム開発です。
- Pull Requestを送ってコードレビューを受けた経験があるか
- Issueを立てて作業を管理した経験があるか
- コンフリクトを解消した経験があるか
- 他人のコードを読んで修正した経験があるか
これらがゼロのまま「実務でGitを使えます」と言っても、採用担当者には刺さりません。
ギャップ③:「最新技術を学んだ」vs「採用現場では枯れた技術が多い」
最新技術を学んでいること自体は良いことです。ただ「現場の技術スタックに柔軟に対応できます」という姿勢を示せるかどうかが、採用側には重要です。
ギャップ④:「短期間での習得」vs「採用現場が求める継続学習の姿勢」
スクールは「3ヶ月でエンジニアになれる」という訴求をすることがあります。これは集客上の表現であり、事実として「転職できる最低ラインに達するための最短ルートが3ヶ月」という意味ではありません。
採用現場が本当に見ているのは、3ヶ月でどれだけ学んだかではなく、「学び続けられる人かどうか」です。スクール卒業後、学習が止まっている人は、いくら「〇〇を学びました」と言っても響きません。
ギャップ⑤:「就職できた実績」vs「その後どうなるか」
スクールは「卒業生の転職成功率〇〇%」という数字を出します。この数字の定義が曖昧なことは置いておくとして、採用企業側が本当に気にしているのは「入社後に戦力になってくれるか」です。
転職はゴールではなくスタート。入社後に活躍できる人材かどうかを面接で見抜こうとしています。「スクールを卒業した」という過去の実績ではなく、「これからどう成長するか」を示せる人が採用されます。
スクール卒でも転職できた人の共通点【部長が見たリアル】
ここまでネガティブな話が続きましたが、スクール卒で採用した人、実際にいます。そういった方の共通点をお伝えします。
スクール卒でも採用した人の話
Aさん(25歳・前職接客業)の場合
スクールを卒業後、転職活動と並行して3ヶ月間、自分でサービスを作り続けた。ポートフォリオには「飲食店のシフト管理アプリ」と「個人ブログCMS」の2つを持ってきた。GitHubには毎日コミットがあり、面接では「この機能を実装するにあたってこういう設計判断をしました」という話ができた。採用を決めた最大の理由は、コードの品質より「問題を自分で定義して解決しようとした姿勢」でした。
Bさん(28歳・前職製造業の品質管理)の場合
スクール卒業後、基本情報技術者試験に合格してから転職活動を開始。面接では「前職の品質管理経験が、バグ検出や仕様確認に活きると考えています」と具体的に話せた。プログラミングのスキルはそこまで高くなかったが、「テストエンジニアとして入社してスキルを積み、将来は開発に進みたい」というキャリアプランが明確だった。
IT転職を成功させる5ステップ|スクール卒版ロードマップ
ステップ①:ポートフォリオを「スクール課題から卒業」させる(1〜2ヶ月)
スクールで作ったポートフォリオを応募書類に使うことをやめてください。代わりに、自分の生活やこれまでの仕事で感じた課題を解決するサービスを1つ作ってください。
ポートフォリオの規模は関係ありません。チーム開発を意識して、Issues・ブランチ・Pull Requestの流れを一人でもシミュレーションしながら開発するプロセスが重要です。
ステップ②:資格を1つ取得して「本気度」を証明する(1〜3ヶ月)
スクール卒であることのデメリットのひとつは、「学習の質と量」が客観的に見えにくいことです。資格はその弱点を補う手段として有効です。
スクール卒が取るべき資格の優先順位:
- 基本情報技術者試験(FE):最優先。国家資格として認知度が高く、採用時に評価される。合格難易度もスクール卒が頑張れば1〜3ヶ月で到達できる
- ITパスポート:FEより簡単。転職に向けた最低ラインとして、まずここから
- AWS CLF(クラウドプラクティショナー):インフラ系を目指すなら。クラウドへの理解を示すエントリー資格
- LinuC Level 1 / LPIC:サーバー・インフラ系に進むならこちら
ステップ③:前職スキルをIT視点で「翻訳」する(並行して実施)
スクール卒の方が見落としがちなのが、前職の経験の活かし方です。「プログラミングを学んだ未経験者」として勝負するのではなく、「前職〇〇の経験を持つプログラミング学習者」として自分を定義することで、差別化ができます。
前職スキルのIT翻訳例:
- 営業職 → ヒアリング力・クライアントコミュニケーション → 要件定義、ITコンサルの素養として
- 接客業・サービス業 → コミュニケーション力・柔軟性 → ヘルプデスク、テクニカルサポートの適性として
- 製造業・品質管理 → 論理的思考、品質意識、手順書作成 → テストエンジニア、QAとして
- 事務職(Excel・業務改善経験) → データ処理スキル、業務フロー理解 → RPA、社内SE、業務系SEとして
- 医療・福祉 → 専門業務知識、ユーザー視点 → 医療系システムの開発・運用、医療DXコンサルとして
ステップ④:ターゲット企業を「量より質」で絞る(2〜3ヶ月)
スクール卒の転職活動でよく見られるのが、「未経験歓迎」の求人に片っ端から応募するという戦略です。これは30代に限らず、時間と精神力を無駄にするだけです。
応募前に必ず確認すべきチェックポイント:
- OpenWork・転職会議でのリアルな口コミ(入社後のギャップを確認)
- 「未経験歓迎」の求人でも、面接で「どんな案件にアサインされるか」を逆質問する
- IT特化の転職エージェントに、応募候補の企業について評判を聞く
- Wantedly等で現役エンジニアに直接話を聞けないか試みる
ステップ⑤:入社後の最初の1年間を全力で駆け抜ける(永続)
転職はゴールではなく、スタートです。入社後の最初の1年間の動き方で、その後のキャリアが大きく変わります。
部下のスクール卒エンジニアを見ていて感じるのは、「自分から動く人」と「指示を待つ人」の差が、1年後には埋めようのないスキル差になるということです。
入社後に必ずやること:
- 現場で使っている技術スタックを毎日少しずつ自習する
- わからないことはその日のうちに調べる習慣をつける
- 上司・先輩のコードを積極的に読む
- 社外の勉強会・コミュニティに月1回は参加する
- 業務で学んだことをメモに残し、半年ごとに振り返る
スクール選びで後悔しないためのチェックリスト
すでにスクールを卒業した方には手遅れの話かもしれませんが、これからスクールを検討している方や、知人に相談されたときのために書いておきます。
✅ 良いスクールのチェックポイント
- カリキュラムにチーム開発が含まれている(個人開発だけのスクールは注意)
- 卒業生のポートフォリオを公開している(質を事前に確認できる)
- 転職保証の「保証先企業」を事前に開示している(非開示のスクールはリスクが高い)
- 卒業後の転職先企業の実名・職種を公開している(「IT業界への転職率〇〇%」だけでは不十分)
- 現役エンジニアが講師を担当している(スクール専業講師は実務感覚がズレている場合がある)
- コードレビューの仕組みがある(動くコードを作るだけでなく、品質に対するフィードバックがあるか)
⚠️ 注意が必要なスクールのサイン
- 「3ヶ月でエンジニアになれる」という過度な訴求
- 受講料が極端に高い(100万円超え)割に、転職先の実績が不透明
- 転職保証の「返金条件」が厳しすぎる(ほぼ返金されない設計になっている)
- 受講生のレビューがSNSやGoogle口コミで極端に少ない・または不自然に高い
- 営業が強引(体験授業当日に即決を求めてくる)
それでも「スクールに通う意味はあるか?」への本音回答
スクールに通う意味がある人
- 独学のモチベーション管理が苦手な人:カリキュラムと締切があることで学習が続く。コミュニティに所属することで孤独感も減る
- 学習方法がわからない人:何から始めればいいか、どの技術を選ぶべきかがわからない段階では、カリキュラムに沿って進められるスクールは有効
- 転職活動のサポートが必要な人:職務経歴書の書き方、面接対策など、独学では得られないサポートを受けられる
スクールに通わなくてもいい人
- 自己管理能力が高く、独学でも続けられる人:Udemy・書籍・YouTubeで学べる環境は整っている。独学の方がコストも自由度も高い
- すでにある程度プログラミングを学んでいる人:基礎がある状態でスクールに入ると、カリキュラムが退屈になり無駄が多い
- 費用対効果を重視する人:50〜100万円の受講料は大きな投資。同額をUdemy・書籍・クラウドサービスの学習に使うほうが、実務に近い力がつくケースもある
独学でIT転職を成功させた人のリアル
私の会社で採用したエンジニアの中に、スクールに通わず完全独学でIT転職した人が数名います。彼らに共通していたのは以下の特徴です。
- 学習記録をブログやZennで公開していた(アウトプットの習慣化)
- GitHubのコミット履歴が1年以上継続していた
- 技術書を複数冊読んで、内容をまとめる習慣があった
- 転職活動前に、フリーランスの小さな案件を1〜2件こなしていた
スクールに通わなかったとしても、これだけの「証拠」があれば採用を検討できます。逆にスクールに通っても、卒業後に何もしていなければ採用は難しい。これが採用担当者の本音です。
まとめ:スクール卒のIT転職は「スクール後の行動」で決まる
長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。最後に要点を整理します。
📌 この記事のまとめ
- スクール卒が転職できない最大の理由は「スクールで学んだことに満足してしまい、行動が止まること」
- 採用担当者が評価するのは「スクールを卒業した事実」ではなく「その後どう行動したか」
- ポートフォリオは「スクール課題作品」から「自分のアイデアで作った作品」へ昇格させる
- GitHubのコミットを毎日続けることが、学習継続の最も強い証拠になる
- 基本情報技術者試験を取得して「本気度」を客観的に示す
- 前職スキルをIT視点で翻訳し、「未経験者」ではなく「異業種経験者」として差別化する
- スクールはツール。「通った」ことより「通った後に何をするか」が転職の結果を決める
SES部長として15年以上採用に関わってきた立場から、最後に一言だけ伝えさせてください。
プログラミングスクールを卒業したのに転職できない、という状況は、あなたの才能の問題でも、スクール選びの失敗だけでもありません。多くの場合、「次の行動を取っていないこと」が原因です。
今日からでも遅くはありません。GitHubを開いて、1行でもコードを書いてください。自分が困っていることを解決する小さなツールを作り始めてください。基本情報技術者試験のテキストを1ページだけ読んでください。
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