「仕事を辞めたい」。この言葉を検索窓に打ち込んだ夜、あなたは何を思っていましたか。
私も30歳の頃、通勤の行き帰りに何度も打ち込みました。当時の私は副業で月100万稼ぎながら、それでも本業を辞められず、結局3ヶ月休職しました。
この記事では、きれいごと抜きで3つのことを書きます。辞めるべき人・辞めない方がいい人の境界線、若手が辞めたくなる3大要因、そして辞めた後に待つ数字のリアルです。
「辞めたい」と検索したあなたに、まず伝えたいこと
私自身、30歳のとき本気で辞めたかった
最初に白状します。私はIT業界の管理職を15年やってきましたが、30歳の頃、本気で会社を辞めたくて、通勤の電車の中で「今日、辞めますって言おう」と毎朝シミュレーションしていました。結局その日は言えず、夜に検索窓で「仕事 辞めたい」と打ち込む。その繰り返しでした。
あなたがこの記事を読んでいる今の気持ちを、私は他人事だと思っていません。だからこそ、ありきたりな「頑張ろう」も「すぐ辞めよう」も書きません。
辞めたいと思うのは、逃げでも甘えでもない
私の部下で辞めていった人たちを思い出すと、一人として「甘え」で辞めた人はいませんでした。みんな、何ヶ月も、場合によっては何年も悩んだ末に、ようやく口に出した。「辞めたい」は、あなたが真面目に働いてきた結果として、体と心が出しているサインです。
この記事は「背中を押す」でも「引き止める」でもない
「辞めていい!」と煽る記事も、「もう少し頑張ろう」と引き止める記事も、あなたには無責任だと思います。私が書けるのは、判断材料だけです。読み終わったあと、「自分の頭で決められる状態」になっていたら、この記事は成功です。
副業で月100万円稼いでいた私が、本業を辞められなかった理由
9時〜21時の常駐勤務と、満員電車の地獄
当時、私はSESエンジニアとして顧客先に常駐していました。朝9時から夜21時まで、ピークの時期は23時まで。帰りの電車では座れず、家に着いたら倒れるように寝て、翌朝また満員電車に乗る。
「稼げているのに、なぜ辞めなかったのか」という葛藤
ここで、たぶん多くの記事には書かれていない話をします。当時、私は副業でブログをやっていて、月に100万円前後の収益が出ていました。本業の月給より、副業のほうが多かったんです。
辞められなかった理由は、ざっと思い出すだけで4つあります。
- 副業の収益が、来月も続く保証がなかった
- 「会社員」という肩書きを捨てる怖さ
- 健康保険、厚生年金、有給、ボーナス——目に見えない安全網への依存
- 親や妻に「会社を辞めた」と言う瞬間の想像
お金の問題じゃなかったんです。もっと根深い、アイデンティティの問題でした。
結局3ヶ月休職した|お金があっても心は守れない
辞めると決断しきれないまま、ある朝ついに体が動かなくなりました。病院で「片頭痛とうつ症状」と診断され、3ヶ月の休職。自分でもびっくりするくらい、あっさりと壊れました。
休職中、私は傷病手当金で生活しました(このリアルな金額はH2-8で詳しく書きます)。副業収益はありましたが、「休んでいる後ろめたさ」で最初の1ヶ月は何も手につかず、布団の中で天井を見ていました。
この経験でわかった「辞められない人の心理」
この休職を経て、私は部下の「辞めたい」相談を受けるとき、絶対に言わないセリフが3つあります。「甘えだ」「根性がない」「俺の若い頃は」。この3つを言う上司は、自分が壊れたことがない人です。
辞められない人は、弱いんじゃない。賢く、慎重で、周りに気を遣える人ほど、辞められないんです。だから簡単に辞める人を羨ましがる必要もありません。
部長として40人以上の退職を見送ってわかった、辞めるべきサイン
朝、会社に向かう足が物理的に止まる
SES部長として、これまで40人以上の退職届を受け取ってきました。その中で、退職後に「辞めて後悔しました」と言ってきた人はほぼゼロです。逆に、「もっと早く辞めればよかった」と言う人は何人もいました。
共通していたのは、退職を決意する直前、みんな「朝、駅のホームで足が止まる」経験をしていたことです。心理的な比喩じゃなくて、物理的に足が動かない。改札の手前で10分立ち尽くした、電車を3本見送った、そのまま引き返して家に帰った。
休日も仕事のことが頭から離れず、体の不調が3ヶ月以上続く
土日に遊んでいても、ふと月曜日の会議のことを思い出して胸が重くなる。これが3ヶ月以上続いていたら、もう要注意です。1週間や2週間なら、どんな仕事にもあります。でも3ヶ月続いているなら、それは一時的な疲れじゃなく、状況が構造的に合っていない可能性が高い。
加えて、以下の体調サインが出ていないか確認してください。
- 日曜の夜に動悸がする、眠れない
- 朝の食欲がない、または過食が止まらない
- 休日も頭痛や肩こりが取れない
- 笑う頻度が半年前より明らかに減った
2つ以上当てはまって、それが3ヶ月続いているなら、まず産業医か心療内科に行ってください。辞めるかどうかはその後の判断で大丈夫です。
「自分がここにいる意味」を言語化できなくなった
私が退職を止めない部下には、ある共通点があります。「なんでこの会社にいるんですか?」と聞いたとき、答えが出ないのです。
「給料がいいから」でも「この技術を学びたいから」でも「このチームが好きだから」でもいい。何か一つ、自分を納得させる理由があればまだ大丈夫。でも、どれだけ考えても答えが出ないなら、あなたはもう心の中で辞めています。
4業界(ホスト・パチンコ・営業・IT)で共通していたサイン
私は高卒後、ホスト、パチンコ店、リフォーム営業、IT業界と、4つの業界を経験してきました。業界は違っても、辞めるべきサインは驚くほど同じです。
- お客さんや同僚に対して、無感情になる(感情を使うのがコスト高になっている)
- 自分の時間を「犠牲」と感じるようになる(投資ではなく犠牲と感じたら危険)
- 休みの日に職場の人の顔が浮かばない(気持ちの上では、もう辞める決断がついている)
職種や業界の問題ではなく、あなたと今の環境の組み合わせの問題です。だから「業界を変えれば解決する」とも限らないし、「環境を変えれば解決することもある」わけです。
若手社員が辞めたくなる3大要因|SES現場で部長が見てきた本音
SES部長として15年、入社2年目までの若手の退職相談を浴びるほど受けてきました。その中で、辞めたくなる理由は大体3つに集約されます。
要因①給与が安い|入社2年目までの壁と、部長からの現実的アドバイス
新卒〜2年目の若手は、給与が上がるスピードが一番遅く感じる時期です。うちの会社の場合でも、1年目から2年目の昇給は月数千円〜1万円程度。「現場で残業して、資格も取って、それでこれ?」という顔をする若手を、毎年見ます。
私の経験で言うと、ITエンジニアは入社3年目〜5年目で給与カーブが急角度に上がるケースが多いです。私自身、28歳で年収500万円台だったものが、39歳で年収1,000万円に到達しました。2年目の段階で判断すると、見える景色が狭すぎます。
部長視点の実務アドバイスとしては、
- 2年目までの給与は「投資期間」と割り切る(ただし最低ラインは下回らないこと)
- 自社の3年目〜5年目の先輩の年収を、こっそり聞く(想像より上がっていることが多い)
- それでも低すぎるなら、3年目の壁を越える前に「市場価値」を調べる
要因②現場がコロコロ変わる|SES特有の不安定さへの向き合い方
SESの構造的な課題として、現場(プロジェクト)が半年〜1年で変わることがよくあります。やっと慣れた頃に別の現場に飛ばされ、また一から人間関係を作り直す。これは想像以上に精神的なコストが高い。
ただ、部長の立場から言うと、現場異動は「キャリアの幅」を広げる機会でもあります。一つの現場に5年いた人と、5つの現場を経験した人では、後者のほうが転職市場では圧倒的に強い。
向き合い方としては、
- 現場異動のたびに「学んだ技術」「使ったツール」をノートに記録する(3年で分厚い資産になる)
- 異動の理由を、必ず営業担当に確認する(ネガティブ異動か、ポジティブ異動かで意味が違う)
- 2年同じ現場にいられる会社か、事前に確認する(会社によって全然違う)
要因③常駐先でのコミュニケーション不足|孤立しないための具体策
SESの一番の闇は、ここかもしれません。自社の同僚とは月1回しか会わず、常駐先では「外部の人」扱い。飲み会にも呼ばれない、雑談にも入れない。気づけば、会社にも現場にも居場所がない状態になっている若手を、私は毎年見ます。
具体的に効果があったのは次の3つです。
- 朝の挨拶を、名前付きで言う(「おはようございます」ではなく「○○さん、おはようございます」)
- 週1回、自社の同期と15分だけオンラインで話す(愚痴でもいい、喋る場所を確保する)
- 自分から「質問を持ち込む」(技術的に詰まった時、5分で終わる質問を意識的に作って、現場の人に話しかける)
コミュニケーションは、待っていると一生来ません。「自分から、小さく」が鉄則です。
優秀な人ほど辞めていく、という現実
私の部下で辞めたのは、いつも「優秀な側」だった
これは、採用側・現場側の両方の視点を持つ管理職じゃないと、なかなか書けない話です。
15年部下を見てきて、断言できることが一つあります。辞めていくのは、いつも「会社が残ってほしいと思っている人」です。評価も高く、顧客からの信頼も厚い、リーダーシップもある——そういう人から、静かに辞表が出てきます。
なぜ優秀な人ほど辞めるのか|3つの理由
私の体感でいうと、優秀な人が辞めていく理由は、大体この3つに集約されます。
- 「次の挑戦」が会社より自分の中で先に育ってしまう:優秀な部下ほど、仕事を覚える速度が早い。半年で現場のエースになる人が、1年経つ頃には「次、もっと難しいのやらせてほしい」と言ってくる。でも会社の都合で、新しい案件が降ってくるのはもう半年後。この半年のラグの間に、気持ちが社外へ向きます。
- 自分の貢献と、給料明細のズレが見えてしまう:私の部下で辞めたKさん(仮名)は、プロジェクトを3つ並行で回していたのに、月給の差は後輩と2万円でした。「自分の時給計算をしたら泣けてきた」と飲みの席で言っていたのを、今でも覚えています。
- 転職サイトをうっかり開いてしまった夜から、戻れなくなる:スカウトが届いた瞬間、自分の市場価値が今の評価より上だと一発でわかる。この一度開いてしまったドアは、閉めても閉めても、また開きます。
「辞めたい」と思えること自体、あなたに価値がある証拠かもしれない
ここを伝えたい読者の方がいます。「自分は優秀じゃないから辞められない」と思っているあなたです。
でも、私の経験では逆なんです。「辞めたい」と真剣に悩めている時点で、あなたは自分の現状を客観視できている。それは能力です。
ただし、優秀だから辞めるべきとは限らない
ここは強調したいのですが、「優秀な人は辞めるべき」とは絶対に言いません。優秀でも残るべき理由がある人もいますし、今の会社で化ける可能性もあります。
伝えたいのは、「辞めたい」という感情を、能力不足のせいにしないでほしいということだけです。感情の原因を正しく見ることで、次の判断が冷静になります。
辞めるべき人/辞めない方がいい人の境界線
辞めるべき人の5つの基準
ここまで読んでくれたあなたに、判断材料を5つ渡します。どれか1つでも当てはまるなら、辞めることを本気で考えていいラインだと、私は思っています。
- 心身の不調が3ヶ月以上続いている。病院でうつや適応障害の診断が出ているなら、もう迷っている場合じゃありません。
- ハラスメントを受けている。パワハラ、セクハラ、モラハラ、どれも「我慢して解決するもの」ではありません。
- 会社の方向性に、自分の倫理で賛成できなくなった。顧客を騙すような営業、グレーな請求、この手の違和感を飲み込み続けると、人間の軸が崩れます。
- 1年以上、成長実感がゼロ。20代の1年は40代の3年分くらい重い。止まったまま年だけ取る恐怖を、なめないでください。
- 家族や恋人から「顔色変わったよ」と言われた。自分の変化は、自分より先に、いつも他人が気づきます。
辞めない方がいい人の6つのサイン
逆に、以下に当てはまる場合、今辞めるのはもったいない可能性があります。
- 特定の1人の上司や同僚だけが原因(異動で解決する可能性がある)
- 直近1ヶ月の出来事で、感情的になっている(まず3ヶ月様子を見る)
- 辞めた後にやりたいことが、全く見えていない(準備不足は後悔の元)
- 貯金が生活費3ヶ月分を下回っている(転職活動の選択肢が減る)
- 評価面談が1年以内に控えている(評価を受けてから判断しても遅くない)
- 転職活動をしたら年収が下がる提示をされた。
判断に迷ったときの「3ヶ月ルール」
それでも迷うあなたに、私が部下に勧めている「3ヶ月ルール」を共有します。
3ヶ月続く「辞めたい」は、感情ではなく意志です。逆に3ヶ月のうちに気持ちが薄れるなら、それは一時的な疲労か、特定のトリガーに対する反応です。
辞める前に必ずやっておきたいチェックリスト
辞めることを決める前に、これだけはやってほしいことをお伝えします。やっておくかおかないかで、辞めた後の生活が天と地ほど変わります。
お金の棚卸し(貯金・退職金・傷病手当金)
まず、今いくら使えるお金があるかを、1円単位で把握してください。貯金、退職金の目安、失業手当、傷病手当金。これを知らずに辞める人が本当に多くて、私は部下に必ず聞きます。
転職市場での自分の価値を知る
転職エージェントに登録して、求人を眺めるだけでもいいです。今の自分が「市場からどう見られているか」を知るだけで、辞める決断の精度が変わります。
辞める理由を紙に書き出して整理する
箇条書きで20個くらい出してみてください。本当に辞めるべき理由と、ただの一時的な不満が、自然に分かれます。
信頼できる第三者に相談する(社外)
家族、友人、転職エージェント、産業医。社内の同僚はNGです。どうしても利害関係が絡みます。社外の、あなたをフラットに見てくれる人に話すだけで、思考が整います。
辞めた後に待っているリアルな現実|数字で見る転職後の生活
転職で年収が下がる人は約3〜4割(厚労省の雇用動向調査)
厚生労働省の「令和4年 雇用動向調査」によると、転職者のうち前職より賃金が減った人は約34%、増えた人は約34%、変わらない人が約30%でした(出典:厚生労働省「令和4年 雇用動向調査結果の概要」)。
ただし、IT業界に限ると、体感として「上がる人」の比率はもう少し高いです。業界や職種、年代によって全然違うので、自分の領域の現実を、エージェントに具体的に聞くのが一番です。
休職中にもらえる傷病手当金のリアルな金額
私が3ヶ月休職した時の傷病手当金は、ざっくり月給の3分の2でした(出典:全国健康保険協会「傷病手当金について」)。月給30万円の人なら、月20万円前後が最大1年6ヶ月支給される計算になります(実際の金額は過去12ヶ月の標準報酬月額で決まります)。
これを知らずに「休んだら無収入になる」と思い込んでいる若手が、本当に多い。病気で苦しんでいる時期に、お金の心配までしなくていいように、制度は存在しています。
退職金と失業手当|中小企業の実態
退職金は、会社の規模と勤続年数で大きく変わります。中小企業の場合、勤続10年で100〜300万円、20年で400〜700万円が目安とされることが多いです(出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」)。ただし制度がない会社も増えており、就業規則を確認するのが確実です。
失業手当(基本手当)は、自己都合退職の場合、原則として待機期間+給付制限(2ヶ月、過去5年で3回目以降は3ヶ月)を経て支給開始、支給額は離職前賃金の45〜80%です(出典:厚生労働省・ハローワーク)。
「辞めて後悔した人」「辞めて良かった人」の分かれ目
私が見送ってきた40人以上の退職者で、後悔している人と満足している人の差は、一言でいうと「準備の有無」でした。
- 後悔した人:辞めてから転職活動を始めた、お金の計算をしていなかった、辞めたい理由が曖昧だった
- 満足した人:辞める3〜6ヶ月前から動いていた、お金の計算ができていた、辞めたい理由と次にやりたいことが言語化できていた
最後に|部長であり、辞めたいと悩んだ当事者からあなたへ
あなたの「辞めたい」は、ちゃんと意味のある感情
ここまで読んでくれて、ありがとうございました。「辞めたい」で検索するあなたの夜を、少しだけ一緒に歩けたら、この記事を書いた意味があります。
もう一度だけ書きます。あなたの「辞めたい」は、甘えでも逃げでもなく、あなたの体と心が出している正直なサインです。無視しないでください。でも、慌てて決断しないでください。
辞めても、辞めなくても、あなたが決めていい
私は副業で月100万稼いでいても辞められなかった。結果3ヶ月休職した。そのあと会社に戻り、39歳で年収1,000万に到達し、今は年収1,400万です。
つまり、辞めなくても道は開けることもあれば、辞めて開ける道もある。正解は一つじゃありません。
一人で抱え込まないでほしい
最後に一つだけ。誰にも相談できずに、夜中に検索窓で「仕事 辞めたい」と打っているあなたへ。一人で決めなくていいです。家族、友人、産業医、転職エージェント、匿名のコミュニティ——誰でもいいので、声に出してください。
声に出した瞬間、「辞めたい」という言葉の重さが、ほんの少しだけ軽くなります。私が40人の退職を見送り、自分でも一度壊れて、最終的にたどり着いた実感です。
もしこの記事のどこか一文でも、あなたの明日の一歩を、少しだけ軽くできるような言葉があったなら、書いた甲斐があります。ゆっくりでいい、自分のペースで決めていきましょう。