出世と年収はどこまで連動するか|昇給を決める側が仕組みを話す

「昇進したら、年収はいくら上がるんですか」

 

面談でよく聞かれます。そして、はっきり答えられる人は社内にもあまりいません。

 

出世と年収は連動します。ただし、思っているほど単純ではありません。

 

私はIT業界で19年、うち部長として6年、中堅SESで部門の昇給を判断する側にいます。この記事では、昇進すると何がどう変わるのか、昇進しなかった場合はどうなるのかを、決める側の立場から書きます。
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📌 この記事を読むとわかること

  • 給与を決めている3つの要素(等級・役職・単価)
  • 同じ「課長」でも、会社で年収が倍近く違う理由
  • 昇進しなかった場合、年収がどうなるか
  • 年収を上げる4つのルートと、効くまでの時間
  • 出世を選ばずに年収を上げられるのか
  • 昇進の話が来たときに、必ず確認すべきこと

この記事の要約

給与は等級・役職・単価の3つで決まり、昇進で動くのは主に等級と役職です。ただし見直しは年1回なので、昇進しても反映はすぐではありません。中堅SESの部長が、同じ役職でも会社によって年収が倍近く違う理由と、年収を上げる4つのルートを、昇給を決める側から書きました。

結論|連動します。ただし、その月には動きません

先に答えを書きます。

 

昇進すれば年収は上がります。ただし反映されるのは、次の見直しのタイミングです。

 

弊社の場合、昇給と降格の見直しは年1回(4月)です。10月に昇進しても、給与が動くのは翌年4月ということになります。

昇進したのに、半年待つんですか?
役職手当だけ先に付くこともありますが、等級が上がるのは見直しのときです。ここは会社によって違うので、確認したほうがいいところです。

給与を決めている3つの要素

SESの給与は、大きく3つで決まっています。

① 等級(グレード)

いちばん土台になるのがこれです。何等級の社員かで、基本給のレンジが決まります。

 

ここが上がらない限り、年収は大きく変わりません。逆に言えば、役職が付かなくても等級が上がれば年収は上がります。

② 役職

係長・課長・部長といった役職に対して付くものです。役職手当という形の会社もあれば、等級とセットで動く会社もあります。

 

ここが会社によっていちばん差が出るところです。後で詳しく書きます。

③ 単価

客先からいくらもらっているか、です。

 

多くの人が誤解しているのですが、単価が上がっても、その月の給与は上がりません。単価は会社の売上であって、給与の計算式に直接入っていないからです。

 

この仕組みはSESの給料はなぜ上がらないのかに詳しく書きました。

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SESの給料はなぜ上がらないのか|単価と給与が連動しない仕組みを決める側が話す

まず、全国平均で見るとどうなっているか

自分の会社の話に入る前に、客観的な数字を置いておきます。

役職別の平均賃金(全国・全産業)
役職別の平均賃金(全国・全産業)

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」では、部長級627.2千円、課長級512.0千円、係長級385.9千円、非役職者302.8千円となっています。

 

これは所定内給与額なので、残業代と賞与は入っていません。年収に直すには、ここに賞与を足して12倍します。

 

非役職者と部長級では、2.07倍の差があります。

2倍ですか。思ったより大きいですね
しかもこれは月額の差です。20年続けば、生涯賃金では比べものになりません。管理職になるかどうかは、それだけ大きい分岐なんです。

課長級の512.0千円は、私の体感とほぼ一致します

月額512.0千円を単純に12倍すると年614万円。ここに賞与が乗ります。

 

この記事のあとのほうで「中堅SESの課長は600万〜800万が相場」と書いていますが、全国平均の数字とほぼ重なります。

 

19年見てきた体感が、統計とずれていないということです。

部長級の平均年齢は53.0歳です

この調査には、年齢と勤続年数も出ています。

「部長」という役職の、全国平均
「部長」という役職の、全国平均

部長級の平均年齢は53.0歳、平均勤続年数は22.2年。

 

私は38歳で部長になりました。全国平均より15年早いことになります。

自慢に聞こえたらすみません。ただ、勤続22.2年が平均という数字を見ると、中途入社で部長というのが統計的にどれだけ珍しいかは分かってもらえると思います(笑)

逆に言えば、多くの会社では、部長になるまでに20年以上かかるのが普通だということです。

 

「同期に先を越された」と感じるタイミングが8〜12年目に集中するのも、この数字と合っています。詳しくは同期に先を越されたときに書きました。

 

同じ「課長」でも、会社でここまで違う

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

同じ「課長」でも、会社でここまで違う
同じ「課長」でも、会社でここまで違う

中堅SESの場合、課長クラスで600万〜800万円が上限というのが、私の見ている範囲での相場です。

 

一方で、ブラック企業の場合は課長でも400万前後の可能性があります。役職は付いたが、手当が数万円だけで等級は据え置き、というパターンです。

 

参考までに、弊社の課長は900万円からです。

自慢をしたいわけではありません!「SESの課長だから600万が限界」ではない、と知ってほしいんです。

違いは、役職が上がったときに等級も一緒に上がる設計かどうかです。

 

役職手当だけの会社だと、責任は増えるのに年収がほとんど変わりません。これが「管理職になっても割に合わない」と言われる正体です。

 

部長クラスや年収1,000万を超えるルートについてはIT業界で年収1,000万を超えるポジション設計の考え方にまとめています。

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今の会社の制度が、頭打ちかもしれないと思ったら

同じ役職でも、等級が上がる設計かどうかで年収は大きく変わります。他社がどんな条件を出しているかを見ておくと、自分の会社の位置が分かります。運営元と対応範囲は、利用前にご確認ください。

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昇進しなかった場合、年収はどうなるか

止まるわけではありません。

 

ベースアップは別枠で動きます。弊社の場合、年1回の見直しで全体が上がることはあるので、何もしなくても少しずつは上がります。

 

ただし、管理職になった同期との差は、毎年開いていきます。

 

5年経てば、はっきり分かる差になります。10年経つと、取り返すのは難しくなります。

しかも中堅SESの課長・部長のポストは、ほとんど空きません。「次に声がかかったら」と思っていると、次が来ないことがあります。

管理職になるかどうかの判断材料は管理職になりたくない人へに書きました。

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単価を上げる努力より、昇進を狙ったほうが早いということですか
どちらが早いとは言えません。ただ、単価は1人分が上限なのに対して、役職は等級ごと動きます。伸びしろの大きさが違う、という話です。

年収を上げる4つのルート

出世だけが手段ではありません。整理しておきます。

年収を上げる4つのルートと、効くまでの時間
年収を上げる4つのルートと、効くまでの時間

① 昇進する

上がり幅はいちばん大きいです。等級と役職の両方が動く会社なら、一段で100万円以上変わることもあります。

 

ただしポストが空かないと動きません。自分の努力だけではどうにもならない部分があります。

② 等級を上げる

見落とされがちですが、役職が付かなくても等級は上がります。

 

年1回の見直しで、何を見て判断しているか。ここを上司に聞いておくと、次の1年の動き方が変わります。

 

「次の等級に上がるには、何が足りませんか」。この質問をしてくる社員は、それだけで印象が変わります。

③ 単価を上げる

効果はありますが、反映は早くて翌年度です。即効性はありません。

 

ただし単価が上がっている人は、等級を上げる交渉の材料を持っていることになります。間接的には効きます。

④ 会社を変える

いちばん速いのがこれです。

 

同じスキル、同じ経験でも、等級の設計が違う会社に移れば、それだけで年収が変わります。

 

先ほどの表のとおり、同じ「課長」で400万の会社と900万の会社があります。これは本人の実力の差ではなく、制度の差です。

 

ただし再現性は会社選び次第なので、見極めが要ります。失敗する人の共通点はSE転職で失敗する人の共通点にまとめました。

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出世を選ばずに年収を上げられるか

できます。ただし条件があります。

 

替えが効かない状態を作ることです。

 

弊社にも、役職には興味がないけれど最新技術を追い続けて、顧客から名指しで指名される社員がいます。単価がそのまま評価に反映されるので、処遇も上がっていきます。

ただしこれは、相当のレベルが要ります。「管理職になりたくないから技術で行く」という消極的な選び方だと、だいたい中途半端になります。

そして注意点がひとつ。年次が上がるほど、現場要員としての需要は落ちます。

 

40代以降に何が起きるかは出世できない40代はどうなるのかに書きました。

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よくある質問

Q. 昇進の話が来たとき、何を確認すべきですか?

「等級も上がるのか」を必ず聞いてください。

 

役職手当だけなら、責任だけが増えて年収はほとんど変わりません。聞きにくい質問ではありませんし、答えられない上司のほうが問題です。

 

あわせて「年いくら増えるのか」を数字で確認してください。

Q. 転職で年収が上がっても、その後が伸びないと聞きます。

あります。入社時の提示額だけを見て決めると、そうなります。

 

見るべきなのは等級が上がる仕組みがあるかとベースアップの実績です。面接で「直近3年のベースアップ率」を聞いてみてください。

Q. 単価が上がったので、給与交渉をしてもいいですか?

してもいいですが、伝え方を変えたほうが通ります。

 

「単価が上がったから上げてほしい」ではなく、「次の等級の要件は満たせているか」という聞き方です。前者は会社の売上の話、後者は制度の話なので、後者のほうが動かしやすくなります。

Q. 評価はいいのに、年収が上がりません。

等級が頭打ちになっている可能性があります。

 

多くの会社では、同じ等級の中で評価が良くても上がり幅には上限があります。等級を上げるしかない、という状態です。

 

その場合、昇進か、転職かの二択になります。

まとめ

出世と年収は連動します。ただし、仕組みを知らないと損をします。

  • 給与は等級・役職・単価の3つで決まる
  • 昇進しても、反映は次の見直し(弊社は年1回・4月)
  • 同じ「課長」でも、等級が上がる設計かどうかで年収が倍近く違う
  • 昇進しなくてもベースアップはあるが、同期との差は毎年開く
  • 年収を上げる道は4つ。いちばん速いのは会社を変えること
  • 昇進の話が来たら「等級も上がるのか」を必ず確認する

 

年収が上がらない原因は、努力不足ではなく制度であることがかなりあります。まずは自分の会社の仕組みを確認してみてください。

 

そもそも昇進が止まっている原因を知りたいなら、出世できない人の特徴5選に、決める側から見た共通点をまとめています。

 

昇進の条件そのものは会社員が出世するために必要な3つのことをどうぞ。