「40代未経験でIT業界に行くのは、もう無理でしょうか」
ネットで検索すると「厳しい」「相手にされない」という言葉が並びます。結論から言えば、厳しいのは事実です。
ただ、その理由が、世間で語られているものと少し違います。
IT部長・こざおです。中堅SES企業(社員200名規模)で19年、採用面接に関わってきました。この記事では、採用する側から見た40代未経験の現実を、きれいごと抜きで書きます。
先に正直に書いておきます。私は40代未経験の方を採用したことがありません。書類は何通も見ていますし、最終面談まで進んだ方もいます。でも、成立していない。
なぜ決まらないのか。その理由が、みなさんが想像しているものとは違うのです。
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📌 この記事を読むとわかること
- 企業側は採れなくて困っている、という前提
- 40代未経験が決まらない3つの理由
- 採用側が書類で最初に見る3点
- 前職の経験をIT向けに翻訳する方法
- 40代が狙うべき職種・避けるべき職種
- 入社時の年収と、2〜3年目でどこまで戻るか
この記事の要約
40代未経験のIT転職が決まらない理由は、年齢そのものではありません。採用側のSES部長が、書類で見ている3点、前職経験の翻訳のしかた、そして下がった年収がどこまで戻るのかを、実例をもとに話します。
先に伝えたい事実|企業側は、採れなくて困っています
最初に、世の中のイメージと逆のことを書きます。
200名規模の中堅SES企業は、中途採用にかなり苦戦しています。
「40代未経験なんて相手にされない」という記事をよく見ますが、現場の感覚は違います。そもそも応募が集まらない。採りたくても採れないのが実情です。
理由は単純で、売り手市場だからです。エンジニアは慢性的に不足していて、経験者は引く手あまた。未経験者であっても、条件のいい会社に流れていきます。

では、なぜ40代未経験は決まらないのか
企業が採りたがっているのに、なぜ成立しないのか。私の経験では、理由は3つです。
理由1:そもそも応募してこない
一番大きいのはこれです。
「どうせ落ちる」と思って応募しない方が、相当数いるはずです。ネットの「40代は厳しい」という情報を読んで、挑戦する前に諦めてしまう。
でも、書類を出さなければ、可能性はゼロのままです。私の会社は40代の応募を弾いていません。年齢で自動的に落とす設定はしていないのです。
理由2:最終面談まで行っても、本人が辞退する
これが意外かもしれません。私が経験した40代未経験のケースで最も多いのが、本人辞退です。
書類が通り、一次面接を通り、最終面談まで来る。こちらは前向きに検討している。それでも決まらない。
理由は、他社からより良い条件を提示されるからです。売り手市場なので、複数社を並行して受けていれば、当然そうなります。
つまり40代未経験の方が「選ばれない」のではなく、むしろ応募者が企業を選んでいる状況が起きています。
理由3:年収の折り合いがつかない
現実的な壁がここです。
40代で転職する方は、前職である程度の年収に達していることが多い。一方、IT未経験で入る場合の提示額は、経験者と同じにはできません。
前職より100万円以上下がるケースは普通にあります。ここを受け入れられるかどうかが、最大の分かれ目です。
逆に言えば、年収の一時的なダウンを許容できる方は、40代でも道があります。数年で戻すつもりで動ける人は強いです。
採用側が、40代の書類で最初に見る3点
書類選考の話をします。私が40代未経験の職務経歴書を開いて、最初に見るのはこの3つです。

① 前職で何を「管理」していたか
一番見ています。
40代の方には、20代にはない蓄積があります。部下がいた、チームを回していた、予算を持っていた、取引先と折衝していた。こうした経験は、IT未経験でもそのまま価値になります。
SESの現場では、数年でリーダーやサブリーダーを任される場面が来ます。そのときに、マネジメント経験がある人は圧倒的に早い。技術は追いつけますが、人を動かした経験は短期間では身につきません。
職務経歴書に「係長として8名のチームを管理」と書いてあれば、私はそこを起点に話を聞きます。
② 転職を決めてから、何を始めたか
これも必ず見ます。
資格を取った、独学を始めた、スクールに通っている。何か一つでも動いている形跡があるかです。
40代で未経験分野に挑戦するということは、それなりの覚悟が必要です。その覚悟が本物かどうかは、「これから頑張ります」という言葉ではなく、すでに始めていることで判断します。
ITパスポートでも構いません。Progateを3ヶ月続けたでも構いません。行動の記録があるかどうかです。
③ 転職回数と、その理由に一貫性があるか
40代だと職歴が長いので、転職回数が多い方もいます。回数そのものは問題にしません。
見るのは一貫性です。営業 → 営業 → 営業なら、職種にこだわりがあると分かります。バラバラでも、「その都度、より裁量の大きい仕事を選んできた」という軸があれば納得できます。
逆に、経緯を聞いても説明が曖昧な方は、入社後も同じ理由で辞めるのではないかと考えます。
前職の経験を、どう翻訳するか
40代未経験の最大の武器は、前職の経験です。ただしそのまま書いても伝わりません。翻訳が必要です。
採用側が理解できる言葉に置き換えてください。

営業職だった方
一番相性がいいと思っています。
SESの現場では、顧客と直接やり取りする場面が多くあります。要望を聞く、無理なお願いを断る、進捗を報告する。これは営業の仕事そのものです。
書き方の例です。
「新規開拓で年間30社を訪問し、顧客の課題をヒアリングして提案書を作成していました。相手の要望を整理して形にする経験は、要件定義の場面で活かせると考えています」
技術の話が一切なくても、これで十分伝わります。
製造業・工場勤務だった方
意外と強いです。
工程管理、品質管理、改善活動。これはシステム開発のプロセスと発想が同じです。手順を守る、不良を出さない、原因を分析して再発を防ぐ。
テスト工程や品質管理のポジションでは、この感覚を持っている人が重宝されます。「なぜこの手順なのか」を考える癖がついている方は、伸びます。
接客・サービス業だった方
コミュニケーション力を書いてください。ただし「コミュニケーション力があります」では伝わりません。
クレーム対応の経験を書くと刺さります。怒っている相手の話を聞いて、着地点を探した経験。これはトラブル対応そのものです。
SESの現場では、障害が起きたときに顧客へ説明する場面があります。そのときに慌てない人は、本当にありがたい存在です。
事務職だった方
業務フローの理解を書いてください。
経理、総務、人事。こうした部門にいた方は、会社の業務がどう流れているかを知っています。業務システムを作る現場では、この知識が効きます。
「請求処理の流れを理解しているので、会計システムの案件で業務要件を読み解けると思います」——こう書けると、他の未経験者と明確に差がつきます。
40代が狙うべき職種・避けるべき職種
職種選びを間違えると、どれだけ準備しても通りません。

狙うべき職種
- テスト・品質管理:入口として現実的。製造業出身者と相性がいい
- インフラ・運用監視:手順が明確で、経験より丁寧さが評価される
- 社内SE・情シス:業務知識が活きる。事務職出身者に向く
- IT営業・セールスエンジニア:営業経験をそのまま使える
共通しているのは、前職の経験が「加点」になる職種だという点です。ゼロから技術力だけで勝負する場所を避けてください。
避けるべき職種
もちろん不可能ではありません。ただし、40代からこの領域を目指すなら、未経験ではなく「すでに作ったものがある」状態で応募してください。ポートフォリオが1つあるかどうかで、扱いがまったく変わります。
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会社選びで失敗しないために|商流を必ず確認する
ここは40代に限らず重要ですが、特に40代の方には強く伝えたいです。
SES業界には深い下請け構造があり、どの階層の会社に入るかで、その後の年収とキャリアが大きく変わります。
実際の商流はこうなっています。
- 発注元:大手企業
- 1次請け:大手ベンダー(日立、キヤノン、富士通 など)
- 2次請け:大手ベンダーの子会社
- 3次請け:中堅SESベンダー(100〜200名規模)
- 4次請け・5次請け…
間に入る会社はそれぞれマージンを取るため、階層が下がるほどエンジニアに届く金額は減ります。
注意してほしいのは、2次請けなのに「1次請けです」とうたう会社が多いことです。そして現実には、4次請けより下の会社がほとんどです。
40代は、20代のように「まず入ってみて、合わなければ数年で変える」という時間の余裕が大きくありません。だからこそ、最初の1社をどの階層で選ぶかが決定的に重要です。
面接で「発注元はどこで、間に何社入っていますか」と聞いてください。答えられない会社は、下流にいる可能性が高いです。
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40代未経験の年収は、実際どのくらいになるのか
一番気になるところだと思います。数字で書きます。

入社時の提示額
未経験で中堅SES企業に入る場合、年収300〜380万円あたりが現実的な提示額です。地域や会社によって上下しますが、このあたりに収まることが多い。
40代で前職が年収500万円だった方なら、150万円前後のダウンになります。これが最大の壁です。
ここを見て「無理だ」と判断する方が多く、前述の本人辞退につながっています。
2〜3年目でどこまで戻るか
ここからが本題です。
未経験入社でも、現場で結果を出せば単価は上がります。テスト工程から製造、設計へと担当が広がれば、それに応じて会社が受け取る金額も上がる。
私が見てきた範囲では、3年目で400〜450万円、5年目で500万円前後まで戻すケースが多いです。前職の水準に戻るまで、おおよそ4〜5年と考えてください。
その先は、役職に乗れるかどうか
5年目以降は、個人差が大きくなります。
プレイヤーのまま続けるなら、500〜600万円あたりで頭打ちになりやすい。一方でリーダーや管理職のポジションに乗れると、そこから先が変わります。
そして40代で入った方は、ここで有利になることがあります。前職でマネジメントをしていた方なら、技術の経験年数が浅くてもチームをまとめる役割を任せやすいからです。
私が40代の方の職務経歴書で管理経験を真っ先に見るのは、この出口が見えているからです。
下がる期間を乗り切れるかが、すべて
まとめると、40代未経験のIT転職は「4〜5年かけて元に戻す」前提の選択です。
この期間を家計として耐えられるかどうか。ここを冷静に計算してから動いてください。貯蓄、住宅ローン、教育費。40代は固定費が重い年代なので、ここを見ずに飛び込むのは危険です。
逆に言えば、計算したうえで「耐えられる」と判断できたなら、挑戦する価値は十分あります。
スクールに通うべきか|採用側の本音
40代の方からよく聞かれる質問です。結論から書きます。
通ってもいいですが、「スクール卒」であること自体は評価していません。
評価しているのは「続けたこと」
私が見ているのは、スクールの名前でもカリキュラムでもありません。数ヶ月間、仕事と並行して学習を継続できたという事実です。
40代で、家庭があって、フルタイムで働きながら、それでも学習の時間を確保した。この行動そのものが評価に値します。
だから独学でも構いません。3ヶ月間毎日30分続けた記録があるなら、それはスクール卒と同じかそれ以上に効きます。
費用対効果は冷静に考える
スクールは数十万円かかります。40代で年収が下がることを前提に動くなら、この出費は軽くありません。
判断基準はシンプルで、「一人だと続かない」なら通う価値があります。強制力にお金を払うという考え方です。
逆に、独学で進められる方は、その費用を生活防衛資金に回した方が合理的です。前述のとおり、下がる期間を乗り切れるかが勝負なので。
詳しくは「プログラミングスクール卒業したのに転職できない」あなたへ|SES部長が採用側の本音を暴露に書いています。
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よくある質問
Q. 45歳、50歳でも可能ですか
正直に言うと、45歳を超えると選択肢はかなり狭まります。
ただし職種次第です。開発職は厳しくなりますが、運用監視や社内SE、IT営業なら年齢の壁は低くなります。前職の業界知識が活きる領域を狙ってください。
「エンジニアになる」ではなく「IT業界で働く」と考えると、道は広がります。
Q. 資格は何から取ればいいですか
ITパスポートからで十分です。
基本情報技術者を目指す方もいますが、40代で働きながらだと数ヶ月かかります。まずITパスポートを取って、応募時に「学習を始めています」と言える状態を作る方が先です。
資格そのものより、取ったという事実が「行動できる人」の証明になる点に価値があります。
Q. 面接で年齢のことを聞かれたら
遠回しに聞かれることはあります。「年下の先輩から指導を受けることになりますが」という形が多いです。
ここで「まったく問題ありません」と即答してください。迷いが見えると、採用側は不安になります。
さらに一歩進めて、「前職でも年下の上司の下で働いていました」といった具体例があれば理想的です。
Q. 未経験可の求人に応募しても本当に見てもらえますか
見ています。少なくとも私は全件目を通します。
ただし、書類の作り方で通過率は大きく変わります。技術の話を無理に書くより、前述の「翻訳」に注力してください。技術は入社後に教えますが、前職の経験は教えられません。
入社後に苦戦する人の特徴
採用された後の話も書いておきます。40代で入社して、苦戦する方には共通点があります。
前職のやり方にこだわる
一番多いパターンです。
前職で成果を出してきた方ほど、自分のやり方に自信があります。それ自体は悪くないのですが、新しい環境では一度手放す必要があります。
年下の先輩から指導を受ける場面も必ず来ます。そこで素直に聞ける方は、驚くほど早く伸びます。
「教えてもらう」を待っている
20代の未経験者には、周囲が手厚く教えます。でも40代だと、周りが遠慮して声をかけにくいという現実があります。
だから自分から聞きにいってください。「分からないので教えてください」と言えるかどうかが、最初の1年を左右します。
年収ダウンを受け入れきれていない
頭では分かっていても、実際に手取りが減ると気持ちが続かないことがあります。
入る前に、家計として何年耐えられるかを計算しておいてください。ここが曖昧なまま入社すると、数ヶ月で「やっぱり戻ろうか」と揺れます。
実際にどう動くか
① 今の年収と、受け入れられる下限を決める
最初にこれをやってください。「いくらまでなら耐えられるか」を数字で出す。
ここが決まっていないと、提示額を見るたびに迷います。家計の固定費を書き出して、何年その水準で生活できるかを計算してください。
② 前職経験の翻訳を、先に書いておく
前述の翻訳を、職務経歴書に落とし込んでください。
応募してから考えるのでは遅いです。書類で落ちたら、翻訳を伝える機会そのものがありません。
③ 資格か学習を、応募前に始める
ITパスポートの勉強を始める、Progateを触ってみる。何でも構いません。
応募の時点で「もう始めています」と言えるかどうかが、書類の通過率を変えます。
④ エージェントに相談して、現実的な相場を知る
40代未経験の場合、求人の探し方が重要になります。年齢不問の求人を自力で探すのは効率が悪いです。
相談するだけでも意味があります。自分の経歴で、どのくらいの提示額が現実的なのかが分かると、①で決めた下限と照らし合わせて判断できます。
「思ったより出る」と分かって踏み切れる方もいますし、「やはり厳しい」と分かって今の会社で頑張る判断をする方もいます。どちらにしても、数字を知らないまま悩み続けるより健全です。
まとめ|厳しいのは事実。ただし理由が違う
要点を整理します。
✅ 決まらない理由の多くは本人辞退と年収の折り合い
✅ 書類で見るのは前職の管理経験・行動の記録・一貫性
✅ 前職経験は翻訳して書く。そのままでは伝わらない
✅ 商流を確認して会社を選ぶ。40代はやり直しの時間が少ない
「40代未経験は厳しい」という情報は、間違ってはいません。でも「相手にされない」は事実と違います。
私の会社にも、40代の方は最終面談まで来ています。決まらなかったのは、能力を否定されたからではありません。条件が合わなかったか、他社を選ばれたか、そのどちらかです。
挑戦する前に諦めるのは、もったいない。書類を出さなければ、可能性はゼロのままです。
なお、30代の方は状況がかなり違います。30代未経験からIT転職は厳しい?|SES部長が採用のリアルと成功戦略を本音で解説に、年代別の戦略をまとめているのでそちらを参考にしてください。
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