SESから社内SEへ転職する方法|送り出した側と発注側、両方から見た現実

「SESを抜けて、社内SEになりたい」

私のところに相談に来る部下で、一番多い希望がこれです。実際にこれまで5人弱を、社内SEとして送り出してきました。

IT部長・こざおです。中堅SES企業で19年、延べ200人以上の部下を見てきました。同時に、発注側として自社のエンジニアを客先に常駐させる立場でもあり、顧客企業の社内SEの方々と日常的に一緒に仕事をしています。

つまり私は、社内SEへ送り出す側であり、社内SEと働く側でもあるという、少し珍しい位置にいます。

この記事では、転職サイトの一般論ではなく、送り出した元部下がその後どうなったかと、発注側から見た社内SEの実態を正直に書きます。

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目次

SESから社内SEが、これほど人気な理由

まず、なぜこれほど希望者が多いのか。相談に来る部下の言葉を並べると、理由ははっきりしています。

  • 現場が変わらない。腰を据えて働ける
  • 自社の社員として扱われる
  • 「作って終わり」ではなく、使われ続けるシステムに関われる
  • 残業が少ないイメージがある

どれも気持ちは分かります。特に1つ目です。

SESは数年ごとに現場が変わります。やっと慣れて信頼された頃に、契約が終わって別の現場へ。また新人のような立ち位置から始まる。これを何度か繰り返すと、「もう落ち着きたい」という気持ちが出てくるのは自然なことです。

ただ、ここで挙がる理由の大半は「SESから逃げたい理由」であって、「社内SEをやりたい理由」ではありません。ここが、後で効いてきます。

発注側から見た社内SEの実態|想像よりずっと泥臭い

ここからが、転職メディアにあまり書かれていない話です。

私は発注側の立場で、顧客企業の社内SEの方と毎週のように打ち合わせをしています。その立場から見た実態を書きます。

社内SEのイメージと、発注側から見た実態
社内SEのイメージと、発注側から見た実態

開発する時間は、思っているより少ない

社内SEの仕事は「開発」だと思って転職すると、かなりギャップがあります。

実際に多いのは調整と管理です。ベンダー(私たちのような会社)との折衝、予算の申請、稟議、要件のとりまとめ、他部署からの問い合わせ対応。私が打ち合わせをしている社内SEの方も、コードを書いている時間はほとんどありません。

手を動かすのはベンダー、社内SEは決める側と調整する側。これが多くの企業の実態です。

「情シス」と呼ばれる仕事の幅広さ

中小〜中堅企業だと、社内SEは情報システム部門の何でも屋になりがちです。

PCのキッティング、アカウント発行、プリンタが動かない問い合わせ、セキュリティ研修の実施、資産管理。こうした仕事が、開発業務と並行して降ってきます。

「もっと技術的なことをやりたかった」という理由で転職した人が、ここで戸惑うケースは少なくありません。

社内の調整力が、技術力より重要になる

これが一番大きい違いかもしれません。

SESの現場では、決められた仕様を実装することが仕事の中心です。ところが社内SEになると、「何を作るか」を社内で決めるところから始まります。

現場部門は「明日から使えるようにしてほしい」と言い、経理は予算を渋り、経営は「それは本当に必要か」と聞いてくる。この間に立って調整するのが社内SEの仕事です。

技術力よりも、社内を説得して動かす力が問われます。

こざお
発注側として一緒に仕事をしていると、優秀な社内SEの方ほど「社内の誰を押さえれば話が進むか」を分かっています。技術の話より、その調整をしている時間の方が長いように見えます。

社内SEへ送り出した元部下5人のその後

実際に私が送り出した5人弱が、その後どうなったか。特定されない範囲で書きます。

社内SEへ転職した元部下のその後
社内SEへ転職した元部下のその後

うまくいったケース

ケース1:調整が得意だった人

現場で顧客との折衝を任せていた社員です。技術力は突出していませんでしたが、話をまとめるのが上手でした。

社内SEに移ってから、まさにその力が活きました。今はIT部門のリーダー的な立場になっていると聞いています。SESで培った「客先で立ち回る力」が、そのまま社内調整に転用できたケースです。

ケース2:業務知識を持っていた人

金融系の現場に長くいた社員で、その業界の業務フローに詳しくなっていました。

転職先は同じ業界の事業会社。「システムが分かる人」ではなく「業務が分かるシステムの人」として採用されました。これは強いです。社内SEの求人で最も評価されるのは、実はこの掛け算だと感じています。

後悔が残ったケース

ケース3:技術を極めたくて移った人

「最新技術に触れたい」という理由で社内SEに転職した社員です。

結果としては、思っていた仕事ではありませんでした。前述のとおり、社内SEは調整と管理が中心です。数年後に「またSESか、受託に戻ろうか迷っている」と連絡をもらいました。

技術を突き詰めたい人にとって、社内SEは必ずしも正解ではありません。

ケース4:「現場が変わるのが嫌」だけで移った人

これは冒頭に書いた「逃げたい理由」で動いた典型です。

転職先は安定していましたが、仕事の裁量が想像より小さく、決められた運用を回す役割でした。SESの方が色々な現場を見られて面白かった、という感想をもらっています。

環境は落ち着いたけれど、刺激がなくなった。これは、どちらが良い悪いではなく何を優先したいかの問題です。

こざお
送り出した立場として言うと、満足している人とそうでない人の差は、はっきりしています。「社内SEで何がしたいか」を言えた人は満足していて、「SESが嫌だから」で動いた人は、数年後にまた悩んでいます。

SESのどの経験が評価され、どれが評価されないのか

採用する側の立場でも考えてみます。私が社内SEの採用担当だったら、何を見るか。

SESの経験|評価されるもの・評価されにくいもの
SESの経験|評価されるもの・評価されにくいもの

評価されるSES経験

① 顧客と直接やり取りしていた経験

最も評価されます。社内SEは社内の「顧客」(各部署)と話す仕事だからです。

要件をヒアリングした、仕様の落としどころを探った、無茶な要求を断った。こうした経験は、そのまま社内調整に転用できます。

② 特定業界の業務知識

金融、製造、物流、小売。長く常駐していた業界の業務が分かっているなら、それは大きな武器です。

同じ業界の事業会社を狙ってください。「システムが分かる人」は他にもいますが、「うちの業務が分かるシステムの人」は希少です。

③ ベンダーコントロールの経験

協力会社をまとめた、進捗を管理した、品質をチェックした。この経験があるなら、社内SEの仕事そのものです。

社内SEの主たる業務はベンダーに発注して管理することなので、発注される側にいた人が発注する側に回るのは、実は自然な流れです。

評価されにくいSES経験

① テスト工程だけを長く担当していた

厳しいですが、事実です。テストしか経験がないと、要件定義や設計の話についていけないと判断されます。

該当する場合は、現職で設計に関わる機会を作ってから動く方が結果的に早いです。

② 現場が短期間で次々変わっている

半年から1年で現場が変わり続けている経歴は、「何ができる人か」が読み取れません。

これはSES企業側の都合であることが多いので本人の責任ではないのですが、書類上はそう見えてしまいます。職務経歴書で「共通して担当した役割」を軸に整理し直してください。

③ 技術スキルだけを並べた経歴

言語やフレームワークの羅列は、社内SEの採用ではあまり刺さりません。

見られるのは「誰と、どう仕事を進めたか」です。技術は前提として、その上で何を調整したかを書いてください。

落ちる志望動機に共通する3つのパターン

志望動機の例文は、他のサイトにいくらでもあります。ここでは逆に、落ちる志望動機を書きます。採用側の視点で見ると、落ちる理由は驚くほど共通しています。

パターン1:「安定した環境で働きたい」

一番多いパターンです。そしてほぼ確実に落ちます。

採用する側からすると、これは「うちに来たい理由」ではなく「今の会社を辞めたい理由」です。しかも「安定」を求める人は、変化のあるプロジェクトを任せにくいと判断されます。

SESの環境が合わなかったという事実があっても、それを志望動機の中心に置かないでください。

パターン2:「腰を据えて技術を磨きたい」

一見、前向きに聞こえます。でも採用側は「うちは技術を磨く場所ではないのだが」と思います。

前述のとおり、社内SEの仕事は調整と管理が中心です。技術を磨きたいという動機は、そもそも仕事内容とずれています。面接官は「入社後にギャップを感じて辞めるだろうな」と判断します。

パターン3:「上流工程に関わりたい」

これも惜しいパターンです。方向性は合っているのに、抽象的すぎます。

「上流」が何を指しているのかが人によって違うので、これだけでは伝わりません。「現場部門の課題をヒアリングして、システム化の要件に落とす部分をやりたい」まで具体化すれば、一気に説得力が出ます。

では、何を言えばいいのか

答えはシンプルで、「その会社の事業課題を、ITでどう解決したいか」です。

社内SEはコストセンターだと思われがちな部門です。だからこそ「事業に貢献する」という視点を持った人は歓迎されます。

求人票と会社のIR資料、採用ページを読めば、その会社が今何に困っているかはある程度見えます。そこに対して自分の経験をどう当てるか。ここまで言語化できている応募者は、正直かなり少ないです。

こざお
私が採用面接で見ているのも、結局そこです。「うちで何をしたいか」を自分の言葉で話せる人は、どの職種でも強い。逆に、待遇と環境の話しか出てこない人は、入社後のミスマッチが起きやすいです。

社内SEに移ると、年収は上がるのか

一番気になるところだと思います。送り出した5人と、発注側として接している社内SEの方々を見てきた実感で書きます。

結論から言うと、短期的には横ばいか、やや下がることが多いです。

移った直後は、上がりにくい

理由は単純で、社内SEはコストセンターだからです。

SESのエンジニアには単価という売上が紐づいています。月60万円の案件に入っていれば、会社にとって明確な売上です。だから単価が上がれば、給与に反映する根拠があります。

一方、社内SEは直接の売上を生みません。事業を支える部門なので、給与テーブルは会社全体の水準に従います。IT業界の中では平均的、事業会社の中では標準的、という位置に落ち着きます。

送り出した5人のうち、転職直後に年収が上がったのは2人です。残りは横ばいか、数十万円下がっています。

ただし、3〜5年後の景色は変わる

では損かというと、そうとも限りません。

社内SEは昇進のルートが会社の中にあります。担当 → 主任 → 課長 → 部長、あるいは情シス部門長。事業会社の管理職ポストに乗れば、SESでは届きにくい水準に行くことがあります。

実際、送り出した中の1人はIT部門のリーダーになり、転職時より大きく年収が上がったと聞いています。

一方SESは、単価が上がっても個人の努力で伸ばせる幅に限界があります。私自身が年収1,000万円を超えたのは部長になってからで、プレイヤーのままでは届かなかった金額です。

つまり、どちらも「役職に乗れるかどうか」が分かれ目で、社内SEはそのルートが会社の中に見えやすい、という違いです。

残業が減って時給換算では上がるケースもある

額面だけでなく、働き方も見てください。

常駐先によっては月40時間、50時間の残業が常態化していることがあります。社内SEに移って残業が月10時間になれば、年収が同じでも時給換算では大きく上がります。

送り出した部下の何人かは、この点を一番喜んでいました。「年収は少し下がったけど、家族と過ごす時間が増えた」と。

年収だけで比較すると、この部分が見えなくなります。

面接で実際に聞かれたこと|送り出した5人の証言

転職サイトに載っている想定質問ではなく、実際に聞かれた質問を本人たちから聞いています。共通していたものを挙げます。

社内SEの面接で実際に聞かれたこと
社内SEの面接で実際に聞かれたこと

「現場で、仕様が揉めたときにどうしましたか」

ほぼ全員が聞かれています。

社内SEの日常そのものだからです。現場部門と経営の板挟みになったとき、どう動ける人かを見られています。

技術的にどう解決したかではなく、誰とどう話して着地させたかを答えてください。

「ベンダーを管理した経験はありますか」

発注する側に回るので、当然聞かれます。

協力会社の進捗を追った、品質をレビューした、無理な要求を断った。こうした経験があるなら、必ず書いて、話してください。SES出身者が最も評価されやすいポイントです。

「当社のシステムで、改善できそうなことはありますか」

中堅以上の事業会社でよく出る質問です。

外から見て分かる範囲で構いません。採用ページが古い、予約システムが使いにくい、IR資料にDXの課題が書いてある。事前に調べて、一つでも答えられるかどうかで差がつきます。

ここで「入社してから考えます」と答える人が多いそうです。だからこそ、準備した人が目立ちます。

「なぜSESを辞めるのですか」

これは必ず聞かれます。そして答え方を間違えると一発で落ちます。

前職の批判をしないでください。「現場が変わるのが嫌で」も避けてください。前述のとおり、逃げの理由になります。

「発注される側で見てきた課題を、今度は発注する側で解決したい」——こう答えられると、SES経験がそのまま志望動機になります。

社内SEになった、その先のキャリア

意外と語られませんが、社内SEはゴールではありません。その先の選択肢も知っておいてください。

  • 情シス部門のマネジメント:課長・部長・部門長へ
  • 社内のDX推進・企画部門:事業側に近いポジション
  • PM・PMOとして独立:ベンダー管理の経験が武器になる
  • 事業会社から事業会社へ転職:業界知識を持ったまま横移動

特に2つ目は、ここ数年で増えている流れです。DX推進室のような部署が立ち上がり、ITが分かって業務も分かる人が引っ張られていく。社内SEは、そのポジションに一番近い場所にいます。

逆に、ずっと運用と問い合わせ対応だけを続けると、市場価値が上がりにくくなります。入社後に何を担当させてもらえるかは、面接の段階で確認しておいてください。

社内SEに向いている人・向いていない人

5人を送り出し、発注側として何人もの社内SEと働いてきた実感で書きます。

向いている人

  • 人と話して物事を前に進めるのが苦にならない
  • 技術は手段だと割り切れる
  • 特定業界の業務知識がある
  • 幅広く浅く関わることに抵抗がない
向いていない人:技術を深く極めたい/調整や社内政治が苦痛/決められた仕様を黙々と実装したい/裁量の小ささにストレスを感じる

 

もし「技術を極めたい」が本音なら、社内SEではなく自社開発企業や、上流工程を担当できる受託開発企業を検討した方が、満足度は高いはずです。転職先の選択肢を、社内SEだけに絞らないでください。

転職活動の進め方|SESからの場合

最後に、実際の動き方です。

在籍中に動く

当たり前ですが、辞めてから探さないでください。

社内SEは求人倍率が高く、決まるまでに半年かかることも普通にあります。収入が途切れた状態で長期戦になると、焦って条件を落とすことになります。

IT特化型のエージェントを使う

社内SEの求人は、一般の転職サイトに出ていないものが多くあります。企業が大量応募を避けるため、非公開にしているからです。

そして、SESから社内SEという経路は、エージェント側も慣れています。職務経歴書の書き方を含めて、相談した方が早いです。

社内SEの待遇や年収を知りたい方は【社内SE転職ナビ】

社内SEに特化しているので、求人の量と、業界ごとの相場感の情報量が違います。まず登録して、自分の経歴でどのレベルの求人が来るかを見るところから始めてください。

IT全般も並行して見ておく

社内SEだけに絞ると、選択肢が狭くなりすぎます。自社開発や受託も含めて比較したうえで決める方が、納得感が違います。

IT転職のプロに無料でキャリア相談する【テックゴー】

複数のエージェントから意見をもらうと、自分の市場価値が客観的に見えます。1社だけだと担当者の主観に引っ張られるので注意してください。

今の会社に伝えるタイミング

これは部長としての本音ですが、内定が出てから伝えてください。

検討段階で「社内SEを考えている」と相談されても、上司としては引き止めるか、次のアサインを考え直すかの判断に困ります。中途半端に伝えるのが、お互いにとって一番よくありません。

なお、退職を切り出せずに悩んでいる方は、仕事を辞めたいのに言えないあなたへも参考になるはずです。

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まとめ|「SESが嫌だから」では、たどり着けない

最後に要点を整理します。

✅ 社内SEの実態は、開発より調整と管理が中心
✅ 評価されるのは顧客折衝・業務知識・ベンダー管理の経験
✅ 落ちる志望動機は「安定したい」「技術を磨きたい」「上流に関わりたい」
✅ 受かる志望動機は「その会社の事業課題をITでどう解決するか」
✅ 技術を極めたいなら、自社開発や受託も比較対象に入れる

 

送り出した5人を見てきて、確実に言えることが一つあります。

満足している人は、全員「社内SEで何がしたいか」を自分の言葉で言えました。逆に「SESが嫌だから」で動いた人は、数年後にまた同じ悩みを抱えています。

環境を変えれば解決するように見えて、実は解決していないからです。

まずは「自分は何が嫌で、何がしたいのか」を切り分けてください。そのうえで社内SEが答えなら、迷わず動いていいと思います。私は送り出す側ですが、納得して選んだ人の転職を止めたことは一度もありません。

こざお
部下から社内SEに行きたいと相談されたとき、私が最初に聞くのは「その会社で何をしたいの」です。ここに答えがある人は、だいたいうまくいきます。答えられない人には、もう少し考えてからでも遅くないよ、と伝えています。

 

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