SES契約を切られる人・切られない人|発注側で契約継続を判断してきた立場から

「SESの契約を切られる人・切られない人の違いは何か」

IT部長・こざおです。中堅SES企業で19年、契約更新の判断を数え切れないほど下してきました。この記事では、発注側・会社側の立場から見た「契約が続く人・切られる人」の本当の理由を、対話形式で正直に解説します。


契約更新の判断で、決め手になるのは技術力だけではない

契約更新の判断って、結局は技術力で決まるものなんですか?
技術力は前提として見るけど、それだけじゃない。スキル面以外の要素が、想像以上に判断を左右してるんだよ。

SES業態における契約更新は、通常1〜3ヶ月単位で発生します。この短いサイクルで繰り返し「継続か終了か」の判断が下されるという特殊性が、他の雇用形態にはない緊張感を生んでいます。だからこそ、何が評価されているのかを正確に理解しておくことは、キャリアを守るうえで非常に重要です。

契約継続の決め手になる5つの要素
契約継続の決め手になる5つの要素

5つの要素を、もう少し具体的に見る

この5つの要素は抽象的に聞こえるかもしれないので、それぞれ具体的にどんな行動として現れるかを補足します。

要素 具体的な行動例
真面目さ わからないことを「わかりません」と言える。曖昧な理解のまま進めない
成長意欲 案件終了後を見据えて、自主的に新しい技術を学んでいる
顧客視点の動き 繁忙期に自分の作業範囲を超えて手伝う姿勢がある
チーム内の役割構築 複数人体制の案件で、他メンバーの状況を把握し声をかけ合える
報連相の質 問題の兆候を、深刻化する前に共有できる

これらはどれも、特別な才能を必要とするものではありません。「相手(顧客・チーム)の立場に立って考える習慣があるかどうか」という一点に集約されます。

技術力があっても切られるケースもあるんですか?
ある!一番大きいのは「主体性のなさ」。言われたことだけをやる人はいらない。細かい点だと、勤怠に課題がある場合も敬遠する。どれだけスキルが高くても、この2つがダメだと評価は伸びない。

顧客から「切りたい」と言われる、本当の理由

顧客側から「この人はちょっと…」と言われることもあるんですか?
ある。理由を振り返ると、いくつかのパターンに集約される。事前面談で聞いていたスキルと実際に差がある、言い訳が多い、品質が悪い、勤怠が悪い——あとは顧客側の業績不振という、本人とは関係ない外部要因もある。
顧客から契約終了を求められる5つの理由
顧客から契約終了を求められる5つの理由

「事前面談とのギャップ」が起きる、意外な原因

面談時に伝えたスキルと実際の稼働にギャップが生じる原因は、必ずしも「本人が話を盛った」ことばかりではありません。むしろ多いのは、本人は正直に話したつもりでも、「できる」の定義が顧客側と食い違っているケースです。

例えば「Javaの経験あり」と言っても、簡単な保守作業しか経験がない場合と、ゼロから設計・実装した経験がある場合では、現場で求められるレベルが大きく異なります。このギャップを防ぐために、私たちは面談前に本人と詳細なすり合わせを行い、「できる」の中身を具体的なレベルで言語化することを徹底しています。これを怠ると、双方にとって不幸な結果を招きます。

業績不振だけは、本人の努力とは関係ないんですね。
そう。ここが、SESという業態の構造的な難しさでもある。だからこそ、会社側の備えが重要になってくる——これは後で詳しく話すね。

顧客から「ぜひ継続してほしい」と言われる人材

逆に、すごく評価される人にはどんな特徴がありますか?
3つある。圧倒的な技術スキル、業務ノウハウの吸収力(顧客社員と同じか、それ以上の知識でエンドユーザーとの上流工程まで対応できる)、そして受け身の姿勢が一切ないこと。この3つが揃うと、顧客の役員クラスから直接「絶対に手放さないでほしい」と言われることもある。

特に「業務ノウハウの吸収力」は見落とされがちですが、重要なポイントです。技術力だけでなく、その顧客の業務そのものを深く理解している人材は、簡単には替えがききません。もはや技術者というより、顧客企業の業務の一部を担う「準社員」のような存在になっています。


契約が切られそうなとき、会社は何をしているか

契約終了が見えたとき、会社としては何をするんですか?
まず他案件・他部署への異動調整を進める。エンジニア本人には見えていない社内の動きだけど、これが一番のセーフティネット。でも、もっと大事なのはその前の段階なんだよ。
契約終了リスクを最小化する会社側の動き
契約終了リスクを最小化する会社側の動き
その前の段階って、具体的には?
日頃から顧客の役員・部長クラスとの人脈を意識的に構築してる。これがあると「あの部署は業績が厳しそうだ」という情報を、正式な連絡が来る前に察知できる。逆に「あの部署は受注好調で人が足りなさそうだ」という情報も同じルートで入ってくる。

具体的に、どうやって人脈を作っているか

人脈作りって、具体的にどうしているんですか?
特別なことはしていない。定期的な訪問、ちょっとした雑談、食事の機会——地道な積み重ね。意識してるのは「案件の話だけをしに行かない」こと。用件があるときだけ来る営業は、「必要なときだけ来る人」でしかない。

用件がなくても定期的に顔を出し、相手の部署の状況、業界の動き、世間話——そうした雑談の中から、業績の兆しや今後の計画が自然と見えてきます。「情報をもらいに行く」のではなく、「情報が自然と集まってくる関係」を作ることを意識しています。この関係性があると、正式なアナウンスの数週間〜数ヶ月前に「そろそろ厳しくなりそうだ」という感触をつかめることがあります。この時間差が、異動調整の成否を分けます。

会社選びの際に確認したい、この視点

この記事を読んでいるのがエンジニア本人であれば、転職・就職先を選ぶ際に、ぜひ確認してほしいポイントがあります。それは「契約終了リスクに対して、会社がどう備えているか」です。

面接の場で、「これまで契約が終了しそうになった社員に対して、どんなフォローをしましたか」と聞いてみてください。具体的な事例をすぐに答えられる会社は、日頃から社員を守る仕組みを持っている可能性が高いです。逆に、曖昧な回答しか返ってこない会社は、契約終了時に個人が孤立するリスクがあります。「切られたときにどう守ってくれるか」は、給与や案件内容と同じくらい重要な、会社選びの判断基準だと考えています。


エンジニア個人ができること

エンジニア個人としては、何を意識すればいいですか?
エンジニア個人が契約を守るためにできること
エンジニア個人が契約を守るためにできること

「早めの共有」が、なぜそんなに重要なのか

現場の異変を早めに共有することの重要性を、もう少し掘り下げます。SES企業の営業担当は、複数の現場を同時に担当していることがほとんどです。営業側から見ると、エンジニア本人からの情報提供がなければ、現場の細かい変化に気づくことはほぼ不可能です。

「今週から追加で入ってきたメンバーが、自分の作業を巻き取り始めた気がする」「最近、上司からの指示が減った」——こうした些細な変化でも、早めに営業や上司に伝えてもらえれば、会社側は契約終了のリスクを想定して、水面下で次の案件を探し始めることができます。逆に、契約終了の正式通知が来てから動き出すと、空白期間が発生するリスクが一気に高まります。エンジニア自身が「現場のセンサー」になってくれることが、会社にとっても本人にとっても最大の防御策になるのです。

技術力だけじゃなく顧客の業務理解を深めること、問題が起きたら言い訳より先に原因と改善策を伝えること、チームなら自分の役割を超えてフォローし合うこと。あと、意外と大事なのが自社の営業・上司に現場の状況を早めに共有すること。「なんとなく雰囲気が悪い」という違和感でも、早めに共有してもらえると対策の選択肢が広がるから。

複数契約を同時に抱える営業視点から見えること

私の立場では、常に10〜20件規模の契約を同時に管理しています。この視点から見えるのは、「契約が切られる/切られない」は、個人の評価だけでなく、案件全体のポートフォリオの中での位置づけにも左右されるという現実です。

例えば、ある顧客の複数の案件を同時に受注している場合、1つの案件で多少の課題があっても、他の案件での信頼関係が全体の評価を支えることがあります。逆に、単発の案件だけで取引している顧客の場合、その1件の評価がすべてになるため、より厳しい目で見られる傾向があります。

この構造を理解しておくと、「なぜ同じような働き方をしているのに、現場によって評価のされ方が違うのか」という疑問が解けることがあります。個人の努力だけではコントロールできない部分があることも、正直に知っておいてほしい事実です。


まとめ|契約継続は「事前の備え」で決まる

  1. 契約更新の決め手は、技術力だけでなく真面目さ・主体性・報連相の質
  2. 顧客から切られる理由は事前面談とのギャップ・言い訳・品質・勤怠・業績不振の5つに集約される
  3. 継続を強く望まれる人材は技術力+業務ノウハウの吸収力+受け身でない姿勢を持つ
  4. 会社側は日頃の人脈構築で、契約終了の兆候を事前にキャッチする努力をしている
  5. エンジニア個人も、現場の異変を早めに会社へ共有することが、自分を守ることにつながる

契約継続は、切られそうになってから慌てて動くものではなく、日頃の信頼関係と情報のアンテナで決まります。会社選びの際は、こうした「日頃からの備え」を持っている会社かどうかも、一つの判断材料にしてみてください。

次のステップとして、以下の記事も参考にしてください。