「優秀な部下が辞めると言い出した。どう引き止めればいいのか」
IT部長・こざおです。19年のマネジメント経験で、部下の退職・転職活動を10名以上、翻意させてきました。しかも表面的な引き止めではなく、その後右腕として成長するレベルで組織に残ってもらっています。
この記事では、実際にあった4つの事例をもとに、部下が辞めたくなる本当の理由と、引き止めではなく「口説き落とす」ための実践術を解説します。
1. 部下が辞めたくなる理由は、ほぼ2つに集約される

| 根本理由 | 具体的な不満の現れ方 |
|---|---|
| 給与面 | 同期と同じ評価なのに給与が低い/業績賞与が出ない/昇格の基準が不透明 |
| 仕事内容 | やりたい職種(SE等)に進めない/会社の業態(SESなど)に将来性を感じない/成長実感がない |
この2つさえ理解していれば、退職理由の8割以上に対応できます。逆に言えば、この2つを放置したまま「辞めないでくれ」と頼んでも意味がありません。
2. 事例①:2年目社員|給与格差への不満から内定辞退へ
かなり優秀な2年目社員。2年目まで業績賞与が出ない社内制度と、同期と比べて明らかに仕事量が多いのに給与が同じという不満から転職活動を開始し、内定を獲得していました。
結果、内定を辞退して残ってもらえました。今では私の右腕にまで成長しています。ポイントは、給与という「今の不満」に対して小手先の対応をするのではなく、「この会社にいれば将来どうなるか」という上位の話をしたことです。
3. 事例②:5年目社員|エージェントに「乗せられた」内定を見抜く
PGからSEになりたいが、社内のハードルが高く「このままではSEになれない」と感じて転職活動を始めた5年目社員。転職エージェント経由で内定を獲得していました。
「あなたは騙されているかもしれない」という事実の指摘に加え、「私の部下でいた方が成長できる」「会社の文化・SESの形態も変えていく」という2段構えで説得。結果、残留してもらい、今ではSEとして活躍しています。
この事例が教えてくれるのは、「引き止め=会社の魅力を語ること」だけではなく「転職先の実態を一緒に確認する」ことも重要な引き止め手段だということです。未経験からのIT転職エージェント選びで気をつけるべき「早く決めさせようとする担当者」の危険性は、未経験IT転職におすすめの転職エージェント比較でも解説しています。
4. 事例③:1年目社員|優秀な若手ほど早く不満を持つ
入社1年目、かなり優秀な社員。事例①と同じく給与面・同期との比較による不満から転職活動を検討していました。
「会社が変わっていく」という抽象的な話だけでなく、「あなた個人にどんな成長機会を用意するか」を具体化したのがこの事例のポイントです。若手ほど、会社全体の未来より「自分のキャリアがどう変わるか」に反応します。
5. 事例④:4年目社員|業態への不満(SES→コンサル志向)
SES事業そのものへの不満から、コンサルティング業態の企業へ転職の内定を獲得していた4年目社員。基本的な説得の流れは事例③までと同様でした。
6. 4事例に共通する「口説き落とす」3つの型

| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 給与面は直接指導で昇格させる | 「昇給を待て」ではなく、昇格に必要な行動を具体的に指導し、実際に上げる |
| ② 仕事内容の環境を用意する | 「リーダーをやらせる」「SEへの道筋を作る」など、個別のキャリアパスを具体化する |
| ③ 会社の未来を語る | 「SESという業態を中長期的に変えていく」という会社全体のビジョンを共有する |
この3つを、部下の不満の中身に合わせて配分するのが私のやり方です。給与への不満が強い人には①を厚く、キャリアへの不安が強い人には②を厚く、業態そのものへの不満には③を厚く。
7. なぜ「未来を語る」だけでは足りないのか
1回目の説得は「言葉」で成立します。でも2人目、3人目と説得していくうちに、「あの人(事例①の社員)は本当に右腕になった」「あの約束は実際に守られた」という実績が社内に蓄積されます。すると、次の説得は「言葉」ではなく「実績」で行えるようになる。これが強い組織を作る好循環です。
8. 引き止めてはいけないケース
10名以上を説得してきた一方で、「引き止めるべきではない」と判断したケースもあります。
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 会社が実現できない約束をしないと引き止められない | その場しのぎの嘘は、後で必ず信頼を失う |
| 本人が本当にやりたいことが、この会社にない | 無理に引き止めても、いずれ再度不満が出る |
| 家庭の事情(介護・転居等)が理由 | 会社側で解決できない問題は、快く送り出す |
全員を引き止めようとすると、実現不可能な約束をしてしまいがちです。約束したことは実現するという原則を守るためにも、引き止めるべきでないケースの見極めは重要です。
9. 退職の兆候を早期にキャッチする方法
- 定期1on1で「今の不満」を直接聞く機会を作る
- 同期との給与・評価の差に敏感な時期(2〜3年目、5年目前後)を把握しておく
- 普段と違う言動(発言減少、有給取得パターンの変化)を見逃さない
- 「辞めたい」と言われる前に、キャリアパスの話を先回りしてする
部下からの退職相談を早い段階で受け止める文化を作れるかどうかは、最年少部長になるために実践したことで触れているマネジメントの設計とも直結します。
10. まとめ|引き止めではなく「口説き落とす」
- 部下が辞めたくなる理由は「給与面」と「仕事内容」の2つに集約される
- 説得の型は①昇格させる、②環境を用意する、③未来を語るの3つ
- 内定が出ていても、内容を一緒に確認すれば「騙されている」ケースを見抜けることがある
- 語るだけでなく「実現する姿勢」を見せることが、10名以上の説得を可能にした
- 会社が実現できない約束をしてまで無理な引き止めはしない
- 退職の兆候は「静かになる」変化で早期にキャッチする
次のステップとして、以下の記事も参考にしてください。