SESで年収1000万は正社員のままで可能か|フリーランス一択論への反論

「SESで年収1000万は、フリーランスに転向しないと厳しい」

そう言われることがあります。正直、半分は事実です。でも、もう半分は違います。

IT部長・こざおです。私は正社員のまま、SESの管理職ルートで年収1,400万円に到達しました。フリーランスにならず、独立もせず、「人を使って稼ぐ」という道を選んだ結果です。この記事では、フリーランスと正社員管理職、2つのルートの年収の伸び方を、正直に比較します。


「フリーランス一択」論への違和感

SESで年収1000万を目指すなら、フリーランスになるべきという意見をよく見ます。実際どうなんでしょう?
単価で稼ぐフリーランスにも夢はある。ただし圧倒的な技術力と、仕事を1次請けで取ってこれる営業力がないと厳しい。この前提が語られずに「フリーランス一択」と言われることに、正直違和感がある。
フリーランスと正社員管理職、2つのルートの違い
フリーランスと正社員管理職、2つのルートの違い

「フリーランス礼賛」の記事に欠けている視点

ネット上の多くの記事は、フリーランスの年収事例を紹介する際、成功した一部の人だけを取り上げがちです。しかし、19年間、多くのエンジニアの転職・独立を見てきた立場から言うと、「圧倒的な技術力」と「1次請けで案件を取れる営業力」の両方を持つ人は、決して多くありません。

この2つが揃わないままフリーランスになると、単価の低い案件を、仲介会社を複数経由して受けることになり、結果的に手取りは正社員時代より下がることも珍しくありません。フリーランス転向を検討する際は、この現実を直視する必要があります。


年収の伸びしろと天井|どちらが有利か

若いうちはフリーランス、将来的には社員の方がいいということですか?
伸びしろで言えば、若いうちから稼げるのはフリーランスの方。社員はどうしても若い時は年収が低めで、徐々に上がっていく傾向がある。天井についても、最先端の技術を極めていれば、フリーランスの方が高いケースもある。ただし、それは限られた人だけの話。

社員の天井は「変えられる」

社員だと天井が決まっている印象がありますが…。
社員の場合は、圧倒的な結果を出せば、天井そのものを上げることができる。社長への働きかけで、自分の給与テーブルを変えてもらうことも可能。それに、リスクを回避しながらチャレンジできるのも社員の強み。フリーランスは会社が守ってくれないから。

実際、年収を理由にフリーランスになったり、転職していった人間は多くいます。でも今の私や、直属の部下の方が、彼らより年収が高いケースがほとんどです。結果さえ出せば、天井を変えることも、結果を出している部下を引き上げることも可能。それが社員という立場の強みだと考えています。

「天井を上げる交渉」は、具体的にどう行うのか

「社長に働きかけて天井を上げる」と言うと、特別な話術が必要に聞こえるかもしれません。実際にやっていることはシンプルで、数字で語ることに尽きます。担当している案件の売上・利益率、チームで生み出した成果を定量的に示し、「この結果に見合う評価をしてほしい」と正面から交渉する。感覚や不満をぶつけるのではなく、事実と数字を積み上げて伝えることで、経営側も納得しやすくなります。


2つのルートに共通する、たった1つの条件

フリーランスと社員、成功するために必要なことは違うんですか?
大きな違いはある。フリーランスは技術を極める必要がある、社員はマネジメントを極める必要がある(チームで売上を上げる)。でも、両方に共通していることが1つだけある。営業力だよ。
フリーランスと社員、それぞれに必要な力と共通点
フリーランスと社員、それぞれに必要な力と共通点

「成長し続けること」と「営業力があること」は、フリーランスでも社員でも、結果を出すための土台として共通しています。違うのは、その先に何を極めるかだけです。


私が独立ではなく「社員管理職」を選んだ理由

フリーランスへの転向は考えなかったんですか?
独立は検討している。でもフリーランスはない。理由は、自分は技術ではなくマネジメントに長けていると気づいたから。一人で稼ぐには限界があるけど、人を使って稼げば天井がない。これがフリーランスにはない、社員管理職ルートの本質だと思ってる。

「一人の技術者としての単価」には物理的な上限があります。1日は24時間しかなく、自分が動ける時間・案件数には限りがあるからです。でも、チームを動かして売上を作るという発想に立つと、理論上、天井は存在しません。これが、私が管理職ルートを選んだ根本的な理由です。

「独立」と「フリーランス」は別の選択肢

ここで誤解してほしくないのは、私が「独立自体を否定している」わけではないという点です。独立は検討しています。ただし、それは個人で技術力を売るフリーランスではなく、会社としてチームを動かす形での独立です。マイクロ法人を活用した事業展開について、マイクロ法人の作り方と節税シミュレーションでも書いていますが、「人を使って稼ぐ」という発想は、会社員のうちからも、将来の独立を見据えるうちからも、一貫して持ち続けているテーマです。


部下からの相談「フリーランスに転向しようか迷っています」

部下からフリーランス転向の相談を受けたことはありますか?
何度もある。そのときは、今話したこと(年収の伸びしろと天井の違い、共通して必要な営業力)を正直に伝える。その上で、本人が技術を極めるタイプで、うちの部署では望みを叶えられないと判断したら、背中を押すようにしてる。
引き止めるんじゃなくて、送り出すこともあるんですね。
きれいに辞めていった子の中には、後になって戻ってきてくれた子もいる。無理に引き止めるより、正直な情報を渡して、本人に選ばせる方がいい。結果的に、それが一番信頼関係を保てるやり方だと思ってる。

正社員管理職ルートの正直なデメリット

管理職ルートのデメリットも正直に聞きたいです。
社員の管理職ルートは、マネジメントが必須。部下や外注の管理、営業面の動きなど、全体的な能力が求められる。フリーランスは営業こそ必要だけど、どちらかというと技術で個人としての能力を発揮して、生産性の面で評価を受ければいい。求められる能力の幅が、根本的に違うんだよ。
フリーランス(技術特化) 正社員管理職
極めるべきもの 技術力 マネジメント力
評価される軸 個人の生産性 チーム全体の売上
必要な能力の幅 技術+最低限の営業 部下管理・外注管理・営業・調整
リスク 案件が途切れると即収入減、会社の保護なし 会社に守られる代わりに、成果責任の範囲が広い
若いうちの年収 高くなりやすい 低めからスタート
天井の変えやすさ 個人の技術力次第 結果を出せば会社と交渉できる

「向き不向き」で選ぶべき理由

ここまで読んでわかるとおり、どちらが優れているという話ではありません。技術を突き詰めることに喜びを感じ、個人としての生産性で勝負したい人はフリーランス向き。人を動かし、チーム全体の成果を最大化することにやりがいを感じる人は、社員管理職ルート向き。この向き不向きを無視して「フリーランスが正解」と一括りにする議論には、注意が必要だと思っています。


まとめ|「技術を極めるか、マネジメントを極めるか」の選択

  1. フリーランスは「若いうちから稼げる・技術力次第で天井が高い」が、圧倒的な技術力と1次請け営業力が前提
  2. 社員管理職は「若いうちは低め、でも天井を変えられる」。結果を出せば会社と交渉できる
  3. 両方に共通して必要なのは「成長し続けること」と「営業力」
  4. フリーランスは技術を極める、社員はマネジメント(チームで売上を上げる)を極める
  5. 「一人で稼ぐ」フリーランスに対し、社員管理職は「人を使って稼ぐ」ことで天井をなくせる
  6. 正解は一つではなく、向き不向きで選ぶべき

年収1000万を目指すなら、まず自分が「技術を極めたいタイプか」「人を動かすことにやりがいを感じるタイプか」を正直に見極めることから始めてください。私自身は後者でした。フリーランスにならなくても、正社員のまま、年収1400万まで到達できています。

次のステップとして、以下の記事も参考にしてください。