「スクールを出ても、結局SESにしか行けない」
よく見かける言い方です。これを聞いて、スクールに通う意味があるのか迷っている人もいると思います。
結論から言うと、半分は当たっていて、半分は順番が逆です。
私はIT業界で19年、うち部長として6年、中堅SESで採用を決める側にいます。スクール卒の方の書類も面接も、実際に見てきました。
この記事では、なぜSESが受け皿になりやすいのかと、SES以外に行ける人は何が違うのかを、採る側から書きます。
📌 この記事を読むとわかること
- スクール卒の受け皿がSESに偏る、構造的な理由
- 「SESしか行けない」が半分だけ正しい理由
- 同じSESでも、入ってよい会社と危ない会社の見分け方
- SES以外に行けた人が、書類で何を示していたか
- SESを入口にする場合、何年で何をすべきか
この記事の要約
中途の未経験は「採らない」のではなく「決まらない」のが実態で、経験者の中途採用は競争が激しく、採用の入口が限られています。そのなかでSESが受け皿になりやすいのは、現場に出しながら育てる設計があるからです。ただし同じSESでも、3年で回収する前提で育てる会社と、安く買いたたいて炎上現場に送る会社があります。中堅SESの部長が、その見分け方と、SES以外に行けた人の違いを書きました。
まず、事実から書きます
採用する側の実態はこうです。
弊社では、中途の未経験をほとんど採用できていません。求人は出していますし、募集サイトにも投資しています。それでも決まらない。
一方で、新卒の未経験は毎年10〜20人を採っています。
中途未経験は「採らない」のではなく「決まらない」のが実態です。
詳しい背景はSES企業はなぜ未経験を採るのかに書きました。
「SESは未経験を大量に採用して、安く使い捨てにしている」 こういう話をよく見かけます。 私は中堅SESの部長として、採用を決める側にいます。その立場から、先に事実を書きます。 弊社[…]
なぜSESが受け皿になりやすいのか
ここが「スクール卒はSESしか行けない」と言われる理由です。
理由は単純で、SESには「現場に出しながら育てる」という設計があるからです。
自社サービスを作っている会社は、基本的に即戦力を採ります。育てる余裕のある会社もありますが、数が限られます。対してSESは、人を現場に出すことが事業そのものなので、育てて出す流れが元から組み込まれている。
業界の人の出入りは、思ったより少ない
もうひとつ、数字で押さえておきます。

厚生労働省の調査によると、令和6年の情報通信業の離職率は10.2%。全産業平均の14.2%より低く、人の出入りが少ない業界です。
入れ替わりが激しいから未経験でも入れる、という話ではありません。入口が限られているぶん、最初にどこへ入るかが長く効きます。
出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査」をもとに作成
同じSESでも、まったく違います
ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。
「未経験歓迎」と書いてある会社でも、設計はまるで違います。
- 育てる会社 教育コストを3年かけて回収する前提。だから育てないと成立しない
- 買いたたく会社 育てる前提がない。炎上している現場に送り込んで短期で消耗させる
弊社の方針は前者です。新卒を1から育てて一人前にしていく。だから新卒が5年目まで残っている割合は8割程度です。
3年で回収する設計の会社は、使い捨てにできません。
正直に書くと、私自身が25歳で未経験入社した会社は、研修が3日で現場でした。教える気がないことを、自分から言っているようなものです。
会社ごとの見分け方は良いSES企業・危ないSES企業の見分け方に、経営側の視点でまとめています。
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SES以外に行けた人は、何が違ったか
では「SESしか行けない」を外せた人は何をしていたのか。
共通していたのは、学んだことを第三者が見て分かる形にしていたことです。

情報処理推進機構(IPA)の集計では、情報処理技術者試験の合格者は累計で約409万人。応募者は令和元年度の54.9万人から令和7年度には77.1万人まで増え続けています。
スクールの修了証は、この中では見えません。
書類で何をどう見られているかは職務経歴書で落とされる人・通る人に、採る側が見ていく順番ごと書きました。
職務経歴書を送っても、会ってすらもらえない。 何が悪いのか、落ちた側には教えてもらえません。 結論から言うと、書いてあることより「書いていないこと」で落ちています。 私はIT業界で19年[…]
SESを入口にすると決めたら
ここまで読んで、それでもSESから入ると決めた方へ。
入口として悪い選択ではありません。私自身がそうでした。ただし、入ったあとに何をするかで分かれます。
- 1年目 現場に慣れる。言われたことを確実にやる
- 2年目 やりたい領域を決めて、上司に言い続ける
- 3年目 その領域の資格を取る。社内で手を挙げる
3年目までに軸が決まっていないと、どこに行っても同じことになります。
30代で動けなくなる人の共通点はSESで30代のキャリアが詰む理由に書きました。早めに読んでおいて損はありません。
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よくある質問
Q. スクールに通う意味はありましたか
独学が続かない人には意味があります。強制力と質問できる相手が手に入るからです。
ただし「通ったこと」自体は評価されません。評価されるのは、通った結果として何ができるようになったかです。ここを混同しないでください。
Q. 未経験可の求人が多いのに、なぜ決まらないのですか
「未経験歓迎」は採用の意思の表明であって、実績ではありません。
弊社も中途未経験の求人は出していますが、実際の採用はほとんどありません。求人票からは、本当に採る気がある会社かどうかは読み取れません。
Q. 年齢が高いと、やはり不利ですか
不利になります。ただし40代は、企業側が採れなくて困っているのに応募が来ないという状態でもあります。
完全な未経験として勝負すると新卒に勝てません。前職の経験を置き換えて伝えてください。営業経験なら要件ヒアリング、管理職経験ならプロジェクト管理、というように。
Q. SESに入ったあと、自社開発に移れますか
移っている人はいます。ただし移れる人と移れない人の差ははっきりしています。
その話はSESから自社開発へ移れる人・移れない人にまとめました。
「いつかは自社開発に行きたい」 SESで働いている人から、何度も聞いた言葉です。そして実際に移った人は、そのうちの一部でした。 差がついたのは、技術力ではありません。 […]
まとめ|行き先より、入口の会社で決まります
最後にまとめます。
- 中途の未経験は「採らない」のではなく「決まらない」。入口が限られている
- SESが受け皿になりやすいのは育てて出す設計があるから。構造の話で、善悪ではない
- ただし同じSESでも3年で回収する会社と買いたたく会社がある
- 見分けるのは新卒の採用人数・研修期間・5年定着率の3つ
- SES以外に行けた人は学んだことを第三者が分かる形にしていた
- 入ったあとは3年目までに軸を決める
「SESしか行けない」かどうかより、「どのSESか」のほうがずっと重要です。