「この会社にいても、もう上がれない」
そう思って転職を考えている人は多いと思います。私も、そう言って辞めていった部下を何人も見送ってきました。
結論から言うと、1年目は上がったように見えて、2年目以降に下がるケースのほうが多いです。
私はIT業界で19年、うち部長として6年、中堅SESで評価と昇進を決める側にいます。辞めると言ってきた部下を止めたこともあれば、背中を押したこともあります。
この記事では、なぜ2年目に下がるのかと、それでも上がり続けた人は何が違ったのかを書きます。
📌 この記事を読むとわかること
- 国の統計では転職で賃金が上がっているのに、2年目で下がる人がいる理由
- 「見せかけの年収」の作られ方3パターン
- 出世できない原因が自分の中にあるか、席の数にあるかの見分け方
- 転職して上がり続けた人に共通していたこと
- 部長が「止めた」ケースと「背中を押した」ケースの基準
この記事の要約
国の調査では転職者の40.5%が賃金増ですが、これは転職直後の比較です。出世できない原因がマネジメントや営業の苦手さにある場合、その弱点は会社を変えても付いてくるため、2年目の評価で下がります。一方、やりたい技術領域が明確で知識を蓄え続けていた人は上がり続けました。中堅SESの部長が、止めた基準と押した基準を書いています。
統計では、転職で賃金は上がっている
まず、世の中の数字を置いておきます。

厚生労働省「令和6年雇用動向調査」によると、転職した人のうち賃金が「増加」したのは40.5%、「減少」が29.4%、「変わらない」が28.4%。増加が減少を11.1ポイント上回っています。
これだけ見れば、転職は悪くない選択に見えます。
2年目にどうなったかは、この数字に入っていません。
ちなみに同じ調査で、「1割以上減った」人も21.7%います。5人に1人は、入った時点ですでに下がっているということです。
出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査」をもとに作成
私が見てきた「1年目は上がり、2年目に下がる」パターン
送り出す側として連絡を取り続けていると、その後の話も入ってきます。
多かったのが、提示された年収は確かに上がったのに、2年目でガツンと下がるというものでした。
背景には、IT業界が売り手市場だという事情があります。多少できなくても、若手ならいくらでも採りたいという会社が多いんです。そういう会社ほど、入口の数字を作りにきます。

とくに1年目だけ特別条件で入れて、2年目から通常の評価制度に乗せるやり方は、よく見ます。本人は「下げられた」と感じますが、会社側は最初からそういう設計です。
なぜ2年目に下がるのか|弱点は、会社を変えても付いてくる
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
弊社で「出世できない」と感じている人を見ていくと、理由はだいたい決まっています。マネジメントが苦手、あるいは営業面が苦手。技術力の問題であることは、実はそれほど多くありません。
出世できない原因が自分の中にあるなら、場所を変えても結果は同じです。
逆に、原因が「席が空いていない」のであれば話はまったく別です。これは本人にはどうにもできないので、動く価値があります。
自分がどちらなのかは、出世できない会社員の特徴5選と解決策で、決める側が何を見ているかと照らし合わせてみてください。
なんで上司は平等に評価をしてくれないんだ… 上司に気に入られているだけの奴が出世してズルい あなたも、こんな不満を抱えながら働いているかも知れませんね。 この記事では、中小企業に勤める会社員が出世できない特徴5選と[…]
逆に、上がり続けた人に共通していたこと
もちろん、転職して上がり続けた人もいます。むしろ、はっきりした共通点がありました。
やりたいことが明確だった人です。
ネットワークを極めたい、クラウドをやりたい、コンサルに行きたい。そういう軸があって、在職中からその知識を蓄え続けていた人は、移ってからも伸びています。資格を取るなど、第三者に示せる形にしていた人がほとんどでした。

転職で上がるのは「逃げる人」ではなく「取りに行く人」でした。
私が「転職しない方がいい」と止めたケース
部下から辞めたいと言われたとき、全部を見送っているわけではありません。止めることもあります。

止めるのは、だいたいこの3つのどれかに当てはまるときです。
- 業界のルールを知らないまま動こうとしているとき
- 転職エージェントに乗せられている可能性が高いとき
- 弊社に、しかも私の下にいた方が、成長も年収も上がると判断できるとき
とくに成長意欲があって、信頼関係ができている部下は、何としても思いとどまらせようとします。その人がうちで伸びる絵が、はっきり見えているからです。
逆に、背中を押したケース
一方で、転職した方が明らかに幸せになれる人もいます。
いちばん多いのは、弊社のビジネスモデルでは、やりたいことを経験させてあげられないときです。
中堅SESなので、案件の幅には限界があります。上流のコンサルをやりたい、自社サービスを作りたいという希望に、こちらが応えられないことは正直あります。
応えられないのに引き止めるのは、その人の時間を奪っているだけです。
そういうときは、止めません。送り出します。
私自身も、心が揺らいだことがあります
偉そうに書いていますが、私も揺らいだことがあります。
常駐先のお客様から、何度か引き抜きの話をいただいたことがあります。正直に言えば、心は動きました。
結果として今の会社に残り、38歳で部長になりました。ただ、あのとき動いていたらどうなっていたかは、今でも分かりません。
だから「転職するな」とは言いません。揺らぐこと自体は、おかしなことではないです。
よくある質問
Q. 出世できないのは会社のせいだと思います。転職すべきですか?
ポストが空かないのが理由なら、動く価値は十分にあります。会社が伸びていなければ、新しい席は生まれません。
ただし、この3年で部署や役職が増えたかどうかを先に確認してください。増えているなら、順番が回ってくる可能性があります。
40代に入っている方は、その後どうなっていくのかを出世できない40代はどうなるのかにまとめたので読んでみてください。
40代に入って、「自分はもう上がらないな」と分かる瞬間があります。 同期が課長になった。後から入ってきた人間が先に声をかけられた。面談で、来期の話が出てこなくなった。 そこで多くの人が「ま[…]
Q. 年収が上がるオファーが出たら、信じていいですか?
内訳を聞いてから判断してください。確認するのは月給・賞与の想定月数・等級・2年目以降の評価制度の4つです。
とくに「年収」としか書かれていない提示は、賞与の比率が高いことが多いです。業績が落ちればそのまま下がります。
Q. 何歳までなら転職で年収が上がりますか?
同じ調査を年齢別に見ると、40代までは増加した人が減少した人を上回っています。45〜49歳でも増加46.4%に対して減少23.8%で、差はむしろ大きいほうです。
逆転するのは55〜59歳で、ここで増加27.4%・減少36.6%となります。年齢で不利になるのは、思われているより後です。
出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査」をもとに作成
Q. 中途入社だと、やっぱり出世しにくいですか?
しにくい会社は実際にあります。ただ、採る側が中途に求めているものははっきりしているので、そこを外さなければ道はあります。
詳しくは中途入社は出世できないのかに書きました。
「中途入社だから、どうせ上はいけない」 そう思いながら働いている人は、かなり多いと思います。 新卒で入った人たちがすでに社内で顔を知られていて、自分はゼロから。会議でも、どこか外様のような扱いを受ける。そうい[…]
Q. 上司に止められました。残った方がいいですか?
止める理由を聞いてください。「お前がいないと困る」なら会社の都合です。「お前はここでこうなれる」と具体的な絵が出てくるなら、聞く価値があります。
前者しか出てこない上司の下に残っても、同じことの繰り返しになります。
まとめ|答えが出るのは、2年目です
最後にまとめます。
- 国の統計では転職者の40.5%が賃金増。ただしこれは転職直後の比較
- 出世できない原因がマネジメント・営業の苦手さなら、弱点は会社を変えても付いてくる
- 原因が席の数なら、動く価値がある
- 上がり続けたのはやりたいことが明確で、知識を蓄え続けていた人
- オファーは年収ではなく内訳で判断する
「出世できないから」は、転職の理由としては弱いです。
「何をやりたいか」まで言えるようになったとき、はじめて転職が武器になります。
年収の上げ方そのものを設計したい方は、IT業界で年収1,000万を超えるポジション設計の考え方も合わせてどうぞ。
「IT業界で年収1,000万円って、一部の天才エンジニアだけの話でしょ?」 そう思っているなら、この記事を読んでほしい。 私は中堅SES会社で38歳・最年少部長として年収1,000万円超えを達成しました。特別[…]