朝、客先のビルに入るのがしんどい。
自社の人間は誰もいない。相談できる相手もいない。契約があるから、簡単には抜けられない。
客先常駐のつらさは、ここが本質です。逃げ場が無いように見えることです。
私はIT業界で19年、うち部長として6年、中堅SESで社員を現場に送り出す側にいます。私自身、うつ病で3ヶ月休職した経験もあります。
この記事では、つらいと感じたときに何から手をつけるべきかを、送り出す側の立場で書きます。精神論は書きません。順番の話だけをします。
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📌 この記事を読むとわかること
- 客先に直接言う前に、自社を通すべき理由
- 自分で変えられること、変えられないことの線引き
- 相談する順番(4ステップ)
- 「迷惑をかける」「評価が下がる」は本当か
- 我慢してはいけないライン
- 会社が動かなかった場合にどうするか
この記事の要約
客先常駐がつらいとき、客先に直接言うのは順番が違います。契約を持っているのは自社なので、動かせるのも自社です。中堅SESの部長が、相談する順番、言いにくさの正体、そして我慢してはいけないラインを、送り出す側の立場から書きました。
結論|まず自社に言ってください
先に答えを書きます。
つらいと感じたら、客先ではなく自社の上長に言ってください。
理由は単純です。契約を持っているのは自社だからです。
客先のリーダーに「きついです」と伝えても、その人にできることは限られています。体制を変える権限も、人を入れ替える権限も、契約の当事者である自社と客先の責任者の側にあります。
つらさには2種類あります
動く前に、分けてください。

左側は、自分で手を打てます。報連相の頻度を上げる、できない作業を早めに言う、自社に状況を共有する。ここを変えるだけで、現場の居心地が変わることは実際にあります。
右側は、どれだけ考えても変わりません。客先のリーダーの性格も、プロジェクトの進め方も、商流の深さも、自分では動かせません。
消耗している人の多くは、右側に時間と感情を使っています。
まず左側をやり切る。それでも苦しいなら、右側は自社に渡す。これが順番です。
商流の深さが現場の条件にどう効いているかはSESの多重下請けはなぜ無くならないのかに書きました。
「多重下請けは中抜きだ」 「なぜ直接雇用しないのか」 言いたくなる気持ちは分かります。私自身、商流の深い位置にいたことがあるので、単価が削られていく感覚も知っています。 ただ、発注す[…]
相談する順番
やみくもに動くと、こじれます。順番があります。

① 自社の上長に言う。そして記録に残す
最初はここです。口頭だけでなく、メールやチャットなど形に残る方法でも伝えてください。
理由は2つあります。言った言わないを防ぐため。そしてもうひとつ、上長が部門長に相談するときの材料になるからです。
「本人からこういう相談が来ている」という事実があると、上は動きやすくなります。口頭だけだと、そこで止まることがあります。
② 営業・部門長のラインに上げてもらう
現場の体制を変える判断は、課長や係長の権限を超えることがあります。
弊社の場合、人の配置を決めているのは課長・係長ですが、客先との交渉が要る話は部門長が入ります。
誰がアサインを決めているかはSESの案件アサインは誰がどう決めているのかに書きました。
「案件ガチャ」という言葉があります。 どの現場に行くかで、その後のキャリアがまるごと変わってしまう。それなのに、自分では選べない。 では、誰がどうやって決めているのか。 私は中堅SESの部長として、自社[…]
③ 現場の体制を変えてもらう
いきなり撤退ではありません。間に入る手が、いくつかあります。
- 担当する作業を変える
- 同じ現場に自社の人間を1人増やす
- 報告ラインを客先の別の人に変えてもらう
- 常駐の日数を減らして、一部を自社作業にする
私も実際にやったことがあります。人を増やすだけで解決した現場は、思っているより多いです。1人で抱えていた状態が変わるだけで、見え方が変わります。
④ それでも難しければ、契約を見直す
最後がこれです。交代、あるいは撤退。
会社としては売上が減るので、簡単な判断ではありません。ただ、社員が潰れるほうが、会社にとっては大きな損失です。
言いにくい理由と、その誤解
言えない人には、だいたい共通の理由があります。
「迷惑をかける」と思っている
いちばん多いのがこれです。
気持ちは分かります。ただ、送り出す側から見ると、黙っていられるほうが困ります。
突然来なくなる。体調を崩して長期で離脱する。そうなると客先にも迷惑がかかり、信頼も失います。早く言ってもらえれば、交代の準備ができます。
「評価が下がる」と思っている
これも誤解です。少なくとも私は下げません。
評価を下げるのは、言わずに結果が崩れたときです。報告があったうえで体制を変えたなら、それはマネジメントの判断であって、本人の評価の話ではありません。
客先での評価が誰にどう伝わっているかは客先常駐の評価は誰がどう決めているのかにまとめています。
客先に常駐していると、自社の上司とは月に一度会うかどうか。 現場を見ていない人が、どうやって自分を評価しているのか。 これは常駐で働く人に共通する疑問だと思います。私は中堅SESの部長として、実際に評価を決め[…]
我慢してはいけないライン
ここだけは、順番を飛ばして構いません。
- 眠れない日が続いている
- 朝、体が動かない
- 食欲が落ちた状態が何週間も続いている
- 休日も仕事のことが頭から離れない
- 人格を否定するような言動を受けている
この段階なら、相談の順番より先に医療機関です。
私自身、うつ病で3ヶ月休職しました。振り返ると、崩れる前に何度もサインは出ていました。当時は「このくらいで休むのは甘え」だと思っていました。
休むと決めたら、会社には診断書を出してください。診断書があれば、会社は動かざるを得ません。
休職からの立て直しについては仕事を辞めたいあなたへに書きました。
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常駐そのものが合わないと感じているなら
客先常駐から離れる道として、社内SEという選択肢があります。どんな求人があるのかだけでも見ておいてください。運営元と対応範囲は、利用前にご確認ください。
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会社が動かなかったら
相談した。記録も残した。それでも何も変わらない。
その場合は、会社そのものを見直す段階です。
判断の材料はひとつで十分です。相談に対して、理由の説明があったかどうか。
「今すぐは難しい。こういう理由で、この時期なら動かせる」。これなら、会社は向き合っています。
一方で、理由もなく「もう少し頑張ってくれ」しか返ってこないなら、次も同じことが起きます。
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よくある質問
Q. 客先のリーダーに直接相談するのはダメですか?
良い関係ができているなら、作業の進め方などは直接相談して構いません。
ただし体制・契約・人の入れ替えに関わる話は、必ず自社を通してください。客先に直接言うと、自社を飛び越えたことになり、話がこじれます。
Q. 待機になるのが怖くて、言い出せません。
気持ちは分かりますが、撤退イコール待機ではありません。次の現場が決まってから動くのが普通です。
待機が会社からどう見えているかはSESの待機は、会社からどう見えているのかに書きました。
Q. 現場を変えてもらうと、次の評価に響きますか?
一度なら、ほぼ響きません。
ただし短期間に何度も繰り返すと、提案しにくい人として扱われます。そのため、変えてもらうときは「何がどう合わなかったのか」を言葉にしておいてください。次の提案の精度が上がります。
Q. 自社開発に移れば解決しますか?
常駐そのものが合わない人には、有効な選択肢です。
ただし常駐がつらい理由が「人間関係」なら、移っても同じことが起きることがあります。何がつらいのかを切り分けてから動いてください。
まとめ
客先常駐のつらさは、逃げ場が無いように見えることから来ます。実際には、動かせる道があります。
- 契約を持っているのは自社。だから自社に言う
- 変えられることと変えられないことを分ける
- 上長 → 部門長 → 体制変更 → 契約見直しの順番で動く
- 相談は形に残す。上が動くときの材料になる
- 体調のサインが出ているなら、順番より先に医療機関
- 相談に理由の説明が返ってこない会社は、次も同じ
早く言うほど、打てる手は多いです。これは送り出す側の本音です。
SESという働き方そのものを見直すなら、SESから社内SEへ転職する方法もあわせてどうぞ。