SESの多重下請けはなぜ無くならないのか|発注側が協力会社を使う本当の理由

「多重下請けは中抜きだ」

「なぜ直接雇用しないのか」

 

言いたくなる気持ちは分かります。私自身、商流の深い位置にいたことがあるので、単価が削られていく感覚も知っています。

 
ただ、発注する側に回ってみると、見え方がまったく違いました。

私は中堅SESの部長として、協力会社に発注する判断をしています。なぜ自社で採用せず、外から人を集めるのか。その理由をそのまま書きます。

結論から言うと、中抜きをしたいからではありません。体制が組めないからです。

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📌 この記事を読むとわかること

  • 多重下請けが無くならない、構造の正体
  • なぜ自社で採用せず、協力会社に頼むのか
  • 中間マージンは、何に対する対価なのか
  • 価値を出す中間業者と、紹介するだけのブローカーの違い
  • 商流の深さが、単価だけでなく役割まで固定してしまう理由
  • 深い商流から抜けるために、本人ができること

この記事の要約

多重下請けは中抜きのために生まれた構造ではなく、リーダー不足が作っています。協力会社に発注する側の中堅SES部長が、なぜ自社採用では体制が組めないのか、中間マージンが何の対価なのか、そして深い商流から抜ける道筋を書きました。

結論|構造の正体は「リーダー不足」です

多重下請けが無くならない理由を、一つだけ挙げるならこれです。

 
リーダーの育成が、最も難易度が高い。

どの企業も、ここで苦戦しています。弊社も例外ではありません。

多重下請けが無くならない仕組み
多重下請けが無くならない仕組み

この循環から抜けられないことが、多重下請けを支えています。

前提|需要に対して、供給が追いついていない

まず業界の前提です。

生成AIの影響が出始めているとはいえ、IT業界は全体として、需要に対して供給が追いついていません。

案件はある。しかし、そこに入れる人が足りない。この状態が続いています。

AIによる変化は生成AIでSESの案件はどう減ったかに書きましたが、減っているのは下流の案件で、上流と、そこを回せる人は今も足りていません。

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なぜ自社で採用しないのか

ここが、いちばん誤解されているところだと思います。

自社で採用するか、協力会社に頼むか
自社で採用するか、協力会社に頼むか

採用しても、リーダーになれるとは限らない

仮に採用を増やしたとします。

優秀なリーダーがどんどん育つのであれば、採用を増やして、自社の体制で案件を立ち上げ、新規顧客の開拓もできます。それが理想です。

ところが、現実はそうなりません。理由は2つあります。

 

  • 優秀な人材は、一定数が転職していく
  • 他の要員は、言われたことだけをやることしかできない(リーダーにはなれない)
厳しい書き方になりますが、採用すれば解決するという話ではないんです。人数ではなく、任せられる人が足りていません。

だから、案件が出たタイミングで外から集める

結果として、こうなります。

案件が出たタイミングで他社に募集をかけて、優秀そうな要員を集めて体制を組む。

 
自社の採用だけで待っていたら、案件に間に合いません。間に合わせようとすれば、外から集めるしかない。これが、商流が1段深くなる瞬間です。

中間マージンは、何の対価なのか

よく言われる「中抜き」の中身です。

中間マージンは、募集をかけて要員を集めたことに対するマージンです。

案件を取ってくる。要件を整理する。募集をかける。候補者を見て、顧客に提案する。入った後の立ち上げを見る。問題が起きたら対応する。

 

この一連の手間に対する対価が、マージンです。

でも、何もしていない会社が間に入っていることもありますよね?
あります!紹介するだけで何もしないブローカーは実在します。そこは私も組みません。ただ、すべての中間業者がそうだと決めつけると、構造を見誤ります。

価値を出している中間業者と、紹介するだけのブローカー。この2つは分けて考える必要があります。

 

どう見分けているかは発注側から見た、信頼できないSES企業の共通点に書きました。

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この構造が、エンジニアに何をもたらすか

構造の説明だけで終わらせないために、影響を書きます。

商流が深いほど、単価は削られる

これは事実です。間に入る会社が増えるほど、手元に残る額は減ります。

同じスキル、同じ働きでも、所属している会社の位置で単価が変わります。

そして、役割も固定されやすい

もう一つ、見落とされがちな点です。

深い商流にいるほど、降りてくるのは下流の作業になります。設計や要件定義の案件は、上の階層で埋まってしまうからです。

 

結果として、言われたことをやるだけの役割が固定され、リーダーの経験を積む機会が来ない。そして、リーダーになれないまま年次だけ上がっていきます。

 
リーダー不足の構造が、個人のキャリアにもそのまま跳ね返っています。

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深い商流から抜けるには

ここまで読んで、打ち手がないように見えるかもしれません。

ただ、業界全体で足りていないのはリーダーです。裏を返せば、そこが最も希少性が高い。

深い商流から抜けるために、本人ができること
深い商流から抜けるために、本人ができること

リーダーの経験は、最短の抜け道です

どの会社も、リーダーが足りていません。

つまり、リーダーができる人は、商流のどの位置にいても引く手があまたになります。技術を極める道もありますが、希少性という意味ではこちらの方が空いています。

管理職に上がるために何が必要かはIT企業で管理職へ、最年少部長になるために実践したことにまとめています。

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会社が上を目指していないなら、場所を変える

商流の位置は、個人の努力では動かしにくい部分です。

会社が新規顧客を開拓しようとしているか。上流の案件を取りに行っているか。そこに動きがない会社にいる限り、降りてくる案件の質は変わりません。

同じスキルでも、商流が一つ上がれば単価は変わります

会社が上を目指していないなら、降りてくる案件の質は変わりません。まず他社の条件を眺めてみてください。

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同じスキルでも、商流が一つ上がるだけで単価は変わります。

よくある質問

Q. 結局、中抜きは悪ではないということですか

価値を出している中間業者と、紹介するだけのブローカーは分けて考えるべきだと思っています。

案件を取り、体制を組み、問題が起きたら対応する。ここまでやっている会社のマージンは、対価です。何もせず間に入っているだけなら、それは別の話です。

Q. なぜ直接契約にしないのですか

発注側にとって、必要な期間だけ体制を組めることに意味があります。

案件は永遠に続きません。終わったときに雇用だけが残る形は、会社として取りにくい判断です。

Q. 自分が何次請けか、どう調べますか

現場で「この案件のエンドユーザーはどこですか」「間に何社入っていますか」と聞くのがいちばん早いです。

面談の段階でも聞けます。答えられない、はぐらかす会社は、だいたい深い位置にいます。

Q. リーダーになる自信がありません

最初から自信がある人は、ほとんどいません。

小さい範囲から任されて、失敗しながら覚えるものです。育てる側がどう考えているかは部下が育たないと悩む管理職へに書きました。任される側から読んでも参考になると思います。

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まとめ|中抜きではなく、リーダー不足が構造を作っている

整理します。

  • 需要に対して供給が追いついていない業界であることが前提
  • リーダーの育成が最も難易度が高く、どの企業も苦戦している
  • 優秀な人材は一定数が転職し、他の要員はリーダーになれない
  • だから採用を増やしても体制は組めず、案件ごとに外から集めることになる
  • 中間マージンは、募集をかけて集めたことへの対価
  • ただし、紹介するだけのブローカーは実在する。ここは分けて考える
  • 商流が深いほど、単価が削られ、役割も下流に固定されやすい
  • 抜け道として最も空いているのは、リーダーの経験

多重下請けは、誰かが得をしたくて作った構造ではありません。

リーダーが足りないという一点から、自然に生まれています。だからこそ、そこを埋められる人の価値が、商流のどこにいても高くなります。