「案件ガチャ」という言葉があります。
どの現場に行くかで、その後のキャリアがまるごと変わってしまう。それなのに、自分では選べない。
では、誰がどうやって決めているのか。
私は中堅SESの部長として、自社の社員をどの現場に出すかを決める側にいます。この記事は、その判断の中身をそのまま書きます。
ネットにある記事の多くは「営業が決めています」で終わっています。間違いではありませんが、会社によって決めている人が違うという一番大事な部分が抜けています。
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📌 この記事を読むとわかること
- アサインの起点が、本人の希望ではなく事業計画である理由
- 決めているのは営業なのか、現場のリーダーなのか
- 誰が決めるかで、単価と育成のどちらが優先されるか
- 本人の希望がどこまで通るのか、通らないのはどういうときか
- 同じスキルの2人がいたときに、何で決めているのか
- 「案件選択制」を、生成AI時代にどう見ているか
- 協力会社と自社社員で、優先順位がどう違うのか
この記事の要約
SESの案件アサインは、年間の事業計画から逆算して決まります。中堅SESの部長が、決めているのは誰か、本人の希望はどこまで通るのか、同じスキルなら何で差がつくのかを、決める側の判断基準として書きました。
結論|アサインは「事業計画」から逆算して決まる
先に結論を書きます。
アサインの起点は、本人の希望ではなく年間の事業計画です。
年間でいくら売り上げるかが先に決まっていて、そこから逆算して要員配置が組まれます。誰をどこに出すかは、その枠の中で決まります。
身も蓋もない話ですが、ここを理解していないと「なぜ自分の希望が通らないのか」がいつまでも分かりません。

そのうえで、本人の希望を叶えるための努力は、実際にしています。その具体的な中身を、この後で書きます。
決めているのは、誰か
ここが会社によって大きく違うところです。
弊社の場合、決めているのは課長と係長
弊社には営業がいません。
課長と係長、つまり現場のリーダーが、自分の担当チームの要員配置を決めています。顧客との調整も、案件の立ち上げも、同じ人がやります。
決裁権は基本的にそこに任せていて、大きな変動があるときだけ私(部長)まで相談が上がってきます。
営業が決める会社との違い
営業が決める会社では、判断材料が単価と稼働率に寄りやすくなります。
営業は現場に入っていないので、「この人がこの現場で伸びるかどうか」を肌で分かりません。結果として、数字で説明できる材料が優先されます。
一方で、現場のリーダーが決める場合は、本人のスキルと現場の相性を見たうえで判断できます。顧客との調整も同じ人がやるので、話が早い。

弊社では、アサインをめぐって揉めることがありません。決めている人が一人だからです。
逆に言えば、営業と現場で判断が割れる会社では、板挟みになるのはエンジニア本人ということになります。
自分の会社では、誰が決めているのか
これは面談のときに聞けます。
「配属はどなたが決めていますか」「営業の方ですか、現場のリーダーの方ですか」。この質問に明確に答えられない会社は、配置の責任の所在が曖昧だということです。
入社後であれば、希望を伝える相手を間違えないためにも、必ず把握しておいてください。
本人の希望は、どこまで通るのか
いちばん知りたいのは、ここだと思います。
大前提は事業計画。ただし努力はする
繰り返しになりますが、事業計画に沿っていることが大前提です。
そのうえで、できる限り本人の希望を叶えられるように努力はします。これは温情ではなく、そうしないと組織が保たないからです。
テストだけの現場が続いている人は、動かします
具体例をひとつ挙げます。
テスト工程だけの現場が続いていて、スキルが身につかないケース。これは配置転換を検討する対象になります。
製造や設計を経験できる現場へ移す。単価だけを見れば、動かさない方が良いこともあります。それでも動かすのは、そうしないと組織として育っていかないからです。
裏を返すと、テストだけの現場を何年も続けさせる会社は、育成を経営課題だと思っていないということです。そのまま30代に入ると、選択肢が一気に狭くなります。
その先に何が起きるかはSESで30代のキャリアが詰む理由に書きました。
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希望が通らないのは、どういうときか
はっきり言うと、事業計画の枠を壊してしまうときです。
今いる現場から抜けると売上が落ちる。代わりに入れる人がいない。希望する現場に、そのスキルで入れる枠がない。
このときは通りません。ただ、通らなかった理由は説明できるはずです。説明のない会社は、そもそも検討していない可能性があります。
同じスキルの2人がいたら、何で決めるか
これはよく聞かれます。
弊社の場合、コミュニケーションスキルと対人スキルを重視します。
技術が同等なら、現場で揉めない人、顧客と話せる人を出します。SESは人を出す商売なので、現場でトラブルを起こさないことが、そのまま次の発注につながるからです。
客先面談で何を見られているかはSES面接・客先面談で見られている本当のポイントに書いています。
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単価が高い案件と、本人が伸びる案件が競合したら
現実に起きる場面です。
結論から言うと、事業計画に照らし合わせて総合的に判断します。どちらかを機械的に優先するということはありません。
そのときに見ているのが、もう一つの軸です。

顧客が中長期で伸びるかどうかも見ている
案件単体の単価だけでなく、その顧客と長く付き合えるかどうかを見ています。
今の単価は低くても、これから伸びる顧客なら早い段階で入っておく価値があります。逆に、単価は高いが先細りが見えている顧客なら、そこに人を張り続けるのはリスクです。
単価の決まり方そのものはSESの単価はどう決まるのかで、計算式ごと公開しています。
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「案件選択制」を、どう見ているか
最近、案件を自分で選べることを売りにする会社が増えました。
これについて、正直な見方を書きます。
売り手市場では成立していた
少し前まではSESが売り手市場だったので、選択制はあり得る選択肢だったと思います。
案件が余っていれば、本人に選ばせても事業計画は埋まります。採用の訴求にもなります。
生成AIが前提の世界では、難しくなる
ただ、これからは難しいと考えています。
生成AIが当たり前になった世界では、SESに出ていた仕事そのものが減ります。
実感として、2次請け・3次請けの上位で仕事ができている弊社でも、案件は少なくなっています。今後さらに厳しくなると見ています。
案件が減る局面では、選べるかどうかより、そもそも案件があるかどうかが問題になります。「案件を選べます」と言われたら、その会社の取引先の数と商流の位置を確認してください。
AI時代に何が評価されるかは生成AI時代に評価される人材・されない人材の違いにまとめています。
「生成AIの登場で、自分の仕事はなくなるのだろうか」 IT部長・こざおです。正直に言います。この不安は、的外れではありません。 SESという業態そのものが、生成AIの台頭によって存続を問われる時代に入っています。自社の社員を見渡[…]
協力会社と自社社員では、優先順位が違います
ここも書いておきます。
アサインの優先順位は、自社の社員が最優先です。これは明確に違います。
弊社は協力会社にも発注していますが、良い案件が出たときに、まず埋めるのは自社の社員です。
理由は単純で、社員は雇用している以上ずっと稼働させ続ける責任があるからです。協力会社のメンバーは、契約が終われば関係もそこで終わります。
もしあなたが協力会社の立場で現場に入っているなら、良い案件が回ってくる順番は後ろだという前提で考えてください。順番を前に持ってくるには、その会社の社員になるか、発注元から直接指名される存在になるしかありません。
アサインで損をしないために、本人ができること
決める側から見て、効果があると思うことを並べます。

特に2つ目が大事です。
「テストばかりで、製造の経験が積めていません」と言われて初めて気づくことは、実際にあります。リーダーは全員の現場の中身まで細かく見きれていません。
言わないと伝わりません。
そして、その希望を伝える相手は、決めている人です。営業がいる会社なら営業、いない会社なら現場のリーダーです。
よくある質問
Q. 希望を出すと、わがままだと思われませんか
思いません。むしろ助かります。
何も言わない人ほど、配置しやすい場所に入れられます。本人が納得しているのか、諦めているのかが分からないからです。
ただし、伝え方はあります。「この現場は嫌です」ではなく「設計工程を経験したいので、次はそういう現場を検討してもらえませんか」と、目的をセットで伝えてください。
Q. 案件が選べる会社に転職すれば解決しますか
解決しないことが多いです。
選択制であっても、選べる案件がそもそも少なければ意味がありません。確認すべきは「選べるかどうか」ではなく「選択肢がいくつあるか」です。
面談では「今、選択肢として提示できる案件は何件くらいありますか」と聞いてみてください。
Q. 単価の高い現場に入れば、給料も上がりますか
会社によります。単価と給与が連動していない会社は珍しくありません。
その仕組みはSESの単価はどう決まるのかで詳しく書いています。
Q. 希望を出しても、何も変わりません
半年出し続けて何も動かないなら、会社側に動かす余地がない可能性が高いです。
取引先が少ない、商流が深い、そもそも案件が無い。どれも本人の努力では変えられません。
その場合は、在職中のうちに他社の条件を見ておいてください。
どういう会社なら選択肢が多いのかは、良いSES企業・危ないSES企業の見分け方も参考にしてください。
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まとめ|「案件ガチャ」の中身は、意外と説明できる
整理します。
- アサインの起点は、本人の希望ではなく年間の事業計画
- 決めているのは営業とは限らない。弊社は課長・係長が決裁権を持っている
- 誰が決めているかで、単価が優先されるか育成が優先されるかが変わる
- テストだけの現場が続く人は、配置転換を検討する。組織が育たなくなるから
- 同じスキルなら、コミュニケーションと対人スキルで決まる
- 単価と成長が競合したら、顧客が中長期で伸びるかまで含めて判断する
- 案件選択制は、生成AI時代には維持が難しくなると見ている
- アサインの優先順位は、自社社員が最優先
「案件ガチャ」と呼ばれていますが、決める側には、ちゃんと理由があります。
その理由を知っていれば、希望を伝える相手も、伝え方も変えられます。運任せにしなくていい部分は、思っているより多いはずです。